今回の研究では、光造形3Dプリンタの中でも安価な液晶マスク型が採用され、連続的な3次元構造を有する光硬化性樹脂の前駆体が作製された。これを真空下1000℃で熱処理したところ、設計した構造が維持されたまま60%収縮し、100~300μmの構造単位からなるカーボンマイクロラティスを得ることに成功。実際に、これらをナトリウムイオン電池負極として用いることで、構造単位が微細になる程、充放電特性が向上することが確認されたともする。

また、従来の粉末ペレット電極と比較した結果、もっとも緻密な構造を有するマイクロラティスは、単位面積当たり容量を4倍まで向上させることができたという。

  • カーボンマイクロラティス電極の概要

    (左)カーボンマイクロラティス電極の概要。(右)カーボンマイクロラティス電極とペレット電極の厚膜化に伴う電極面積当たり容量の変化 (出所:東北大プレスリリースPDF)

なお、今回作製されたカーボンマイクロラティスは、黒鉛のような結晶性を持たないハードカーボンと呼ばれる構造を持ち、多くの金属イオン電池候補の中でもナトリウムイオンの充放電との相性が優れていることが知られている。この特性を用い、充放電の各段階で電極を回収・洗浄し、ナトリウムイオンの侵入がハードカーボン内部の構造に与える影響をX線回折法により可視化することにも成功したとしており、研究チームでは、性能面でリチウムイオン電池に匹敵するナトリウムイオン電池の開発が期待されるとしている。

今後については、数値シミュレーションを用いた周期構造の最適化を行うことで、さらなる高性能化が実現できる可能性があるとしているほか、光造形方式は樹脂の分子構造の改良や、ほかの材料との混合でハードカーボン以外の材料にも対応できる可能性があり、陽極もマイクロラティス化したナトリウムイオン電池の開発や、ほかの金属イオン電池に適したマイクロラティス電極の開発につながることも期待されるとしている。