東北大学は7月14日、ナトリウムイオン電池の負極に適したハードカーボンからなる連続周期構造の「カーボンマイクロラティス」を3Dプリンタで作製し、格子中の空隙が高速イオン輸送を可能にし、固体中の低速な拡散に制限されていた電極面積当たり容量を4倍に引き上げることに成功したと発表した。
同成果は、米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の勝山湧斗大学院生、リチャード・B・カナー ディスティングイッシュトプロフェッサー、東北大 材料科学高等研究所の工藤朗助教、東北大 学際科学フロンティア研究所の韓久慧助教、米・ジョンズ・ホプキンス大学の陳明偉教授、東北大 多元物質科学研究所の小林弘明講師、同・本間格教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、ナノスケールおよびマイクロスケールのサイエンスに関する学際的な分野を扱う学術誌「Small」に掲載された。
リチウムイオン電池(LIB)に使用されているリチウムやコバルトなどの希少資源は、現在、電気自動車(EV)などの増産に伴い世界的に消費量が拡大しており、このままだと2030年前後には需要が供給を上回ってしまうとされ、世界中で資源争奪戦になることが懸念されている。すでにリチウムの主原料である炭酸リチウムの価格は、この2年間でおよそ16倍ほどに高騰しており、化石燃料脱却の新たな不安材料にもなっているという。
そのため、日本ではリチウムを使用しない複数の次世代バッテリーの研究開発が進められており、中でも、豊富な海洋資源を利用できるナトリウムイオン電池の実用化が期待されているとする。
バッテリーの容量は、電極にどれだけイオンを充填できるかで決まる。しかし、電極材内部はイオンの移動速度が遅いため、従来の薄膜・ペレット状の電極を厚くしても効果的な電極材は実現できず、容量と出力の両立にはセルをスタックするしかないという。
電極全体に金属イオンが高速で出入りできるよう、マイクロメートルスケールで制御された連続した3次元イオン拡散パスを実現できれば、出力を損なうことなくセル当たりの容量を増大できるだけでなく、スタック構造と比べて生産コストの削減にもつながることが考えられており、この連続的な3次元構造をコンピュータ上でデザインし導入する手法として、近年、3Dプリンタ技術が注目されるようになってきたという。
そこで研究チームは今回、3Dプリント技術を用いて周期的連続多孔構造の炭素電極を作製し、その性能向上を図ることにしたという。