また、今回の観測では1天体あたりおよそ20分間の動画撮影が行われ、32天体の自転周期の推定に成功したという。そのうちの13天体は、60秒以下の周期で高速自転していることも確認されたとする。

  • 小惑星2022UQ6の観測画像

    (左)小惑星2022UQ6の観測画像。視野は1分角×1分角。(右)小惑星2022 Q6の明るさの時間変化(発表学術誌の内容をもとに作成されたグラフ) (出所:東大Webサイト)

なお、ヨープ効果を考慮すると、直径10m以下の微小小惑星は自転周期10秒以下にまで回転が加速されることが考えられるが、実際に今回の観測で発見された自転周期10秒以下の小惑星は1天体のみであり、自転周期10秒以下にまで加速するというヨープ効果を考慮した予測にはそぐわない結果であったという。そのため研究チームでは、観測で得られた自転周期分布を説明しうる仮説の検証を重ね、近年提唱された小惑星の表面に沿う方向の熱伝導を考慮した「接線ヨープ効果」により、観測結果を説明できることが示されたとしている。

  • これまでの小惑星の観測で得られたサイズと自転周期の関係

    これまでの小惑星の観測で得られたサイズと自転周期の関係。赤の〇印は今回の、青の×印は先行研究の観測結果。破線は接線ヨープ効果が考慮された際に予測される、地球接近小惑星の自転周期分布の上限。一点鎖線は従来のヨープ効果のみの上限。先行研究の観測結果は、Warner et al. (2009, Icarus, 202, 134) のThe Asteroid Lightcurve Databaseを参照したもの(発表雑誌をもとに作成されたもの) (出所:東大Webサイト)

研究チームでは、今回の研究成果について、微小小惑星の自転状態の観測から、地球近傍小惑星がどのような作用を受けながら地球の至近距離までやって来るのかという、力学進化の解明につながることが期待されるとしている。