今回のFBUT天体の爆発直後の観測データからは、主成分である秒速3万km程度(光速のおよそ1/10)の膨張物質に加え、秒速10万km(光速のおよそ1/3)にも達する超高速成分も存在することが示唆されたという。これらについて研究チームでは、FBUT天体の正体解明の鍵になる情報であると考えられるとしている。
また今回の観測データから、理論モデルの構築も進展しており、活動的なコンパクト天体が関係していることはほぼ疑いようがないとする。具体的には、大質量星ブラックホールの潮汐力により恒星が破壊される現象や、大質量星の崩壊に伴ってブラックホールやマグネター(強磁場中性子星)が形成される現象など、いくつかの現象にまで絞り込むことに成功しているという。
そうした可能性の1つとして挙げられているのが、非常に重い星が爆発してブラックホールを形成して外層をジェットのような形で放出するという、脈動型電子対生成超新星「Pulsational Pair-Instability Supernova(PPISN)」だという。MUSSES2020Jは、2018年に発見された特異な超新星である「AT2018cow」と似たような光度曲線が示されたことを特徴の1つとしている。そして、AT2018cowの光度曲線をよく再現する有力モデルの1つが、PPISNの噴出物と周囲星物質の相互作用によるもので、MUSSES2020JとAT2018cowの光度曲線の差については、周辺物質の量の違いにより説明できる可能性があるとしている。
なお、FBUT天体は紫外・青色光での輝度が非常に高いことから、今後行われる紫外域にまで感度を持つ広視野光学探査の有望なターゲットとなることが期待されるとしており、今後数年のうちに、新世代光学サーベイ施設が科学観測を開始することから、高感度Uバンドサーベイにより、広い赤方偏移領域にわたって数十個のFBUT天体が発見される可能性があるとのことで、研究チームも引き続き世界中の望遠鏡を駆使して突発天体探査を行い、FBUTの起源を解明していくとしている。