早稲田大学(早大)、筑波大学、国立天文台(NAOJ)、四国学院大学の4者は7月1日、アルマ望遠鏡を用いて、これまでに見つかった回転円盤銀河の中では最遠方となる132.8億光年かなたにある銀河「MACS1149-JD1」が回転している兆候を発見し、現在の天の川銀河の回転速度と比べると4分の1以下の秒速50kmと、ゆっくりとした回転であることを発表した。
同成果は、早大大学院 先進理工学研究科の徳岡剛史大学院生(研究当時)、早大 理工学術院の井上昭雄教授、筑波大の橋本拓也助教、NAOJ/早大の菅原悠馬研究員、四国学院大の清水一紘准教授を中心に、国内外の総勢16名が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。
天の川銀河は円盤状の構造であり、その円盤は回転運動をしており、約秒速220km(時速79万2000km)という平均回転速度による猛烈な遠心力が、銀河中心へと引っ張ろうとする重力と釣り合うことで、円盤構造が保たれている。
このような回転円盤銀河が、宇宙の歴史上いつごろできたのかというと、最近の観測から、120億年以上前の宇宙に巨大な回転円盤銀河や渦巻銀河が見つかっている。さらに130億年ほど前までさかのぼると、ある程度の回転運動が見られるものもあれば、逆に回転運動がほとんど見られないものも観測されており、銀河の回転運動の起源に迫りつつあると考えられている。
最初期の銀河が回転運動をしているのかどうか調べることは、銀河の形成過程の理解にとって重要な知見になるという。もし回転運動をしていれば、銀河へのガスの流入が整然として継続的にあり、その流れの中で星が生み出されて銀河が形作られたと考えられるという。逆に、回転運動がなければ、小銀河の衝突を繰り返すような激しいイベントを経て、銀河が形作られたと考えられるという。
こうした背景を踏まえ、研究チームは今回、これまで観測されている中で、132.8億光年という最遠の銀河の1つであるMACS1149-JD1をアルマ望遠鏡で観測し、回転運動の有無を調べることにしたという。