大阪大学(阪大)は6月28日、テラヘルツ(THz)波を利用し、極微量溶液中の溶質濃度を超高感度で検出できるコンパクトなバイオケミカルセンサチップを開発したことを発表した。
同成果は、阪大 レーザー科学研究所(ILE)の芹田和則特任助教、阪大大学院 工学研究科の小畠敏嗣大学院生(研究当時)、阪大 ILEの斗内政吉教授らの研究チームによるもの。詳細は、光の特性と応用に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Journal of Physics: Photonics」に掲載された。
近年、1チップ上で、体液中に微量で存在するバイオマーカーや細胞などを分析・診断できるチップの開発が進んでいるが、この実現にはマイクロメートルスケールの空間で微量溶液を高感度かつ定量的に計測する技術が求められることとなる。
一方、THz波(0.1~10THz)によるバイオセンシングでは、DNAの水素結合の強弱やタンパク質を構成する分子の微弱な回転運動といった、ほかの電磁波計測では得られない生命機能メカニズムに関わる重要な情報をラベルフリーで検出することができる。つまり、THz波でも微量分析が可能なコンパクトなチップができれば、既存のチップ技術と組み合わせた多方面からの分析や迅速な診断が可能となり、新たな生化学分析や次世代医療の実現につながることが期待されるようになるという。
しかし、THz計測の多くは、THz波をレンズで数ミリ程度の領域に集光して計測する手法を採用しており、マイクロメートルスケールでの計測が困難であること、ならびに水に対する信号減衰が大きく、溶液サンプルでは検出感度が低下してしまうという課題を抱えていたとのことで、THz波を利用したコンパクトなチップの開発は、ほかの技術と比較して遅れていたという。
そこで研究チームは今回、阪大発の技術である、非線形光学結晶へのフェムト秒パルスレーザー光照射で生成される微小なTHz波点光源と、メタマテリアルとの相互作用に注目することにしたとする。