拡張ミッションでは何をする?

はやぶさ2#チームの事業は、大きく2つ。1つは、探査機を運用し、小惑星探査を継続すること。もう1つは、はやぶさ2の成果を促進・発展させることだ。このうち前者については、これまで航法誘導制御を担当してきた三桝裕也氏が探査機運用リーダーとなり、運用全般を統括していくという。

  • はやぶさ2#の概要

    はやぶさ2#の概要。挑戦的なミッションが盛りだくさんだ (C)JAXA

三桝氏は、「はやぶさ2はここまで非常に良い成果を出しており、とてもプレッシャーを感じている」としつつ、「この“延長戦”を戦えることは、夢のような気持ち。はやぶさ2と探査の旅を続けられる幸せを噛みしめながら、着実に運用を進め、少しでも良いニュースを届けられるよう全力を尽くしたい」と意気込みを述べた。

  • 三桝裕也氏

    三桝裕也氏(JAXA宇宙科学研究所 主任研究開発員)

しかしその一方で、はやぶさ2#の難しさは「時間」だ。探査機を打ち上げたのは2014年のことで、設計寿命はとうに過ぎている。今のところ、まだ大きな故障は出ていないものの、1998 KY26に到着するのは2031年7月と、あと9年もある。いつ何が起きてもおかしくない状況が続き、難しい舵取りを迫られることもあるだろう。

ただ、これからどんなトラブルが起きるのか、観察することまで含めてのはやぶさ2#ミッションである。日本の深宇宙探査機で、これほどの長旅は初めての経験。はやぶさ2#では、燃料を節約する運用技術などにも取り組み、そういった知見は今後の探査計画にも大いに役立つはずだ。

  • フライバイ、スイングバイ、ランデブーと、様々なイベントが続く

    フライバイ、スイングバイ、ランデブーと、様々なイベントが続く (C)JAXA

さて、首尾良く1998 KY26に到着できたとして、そこで何をやるのか。まず実施するのは、リュウグウのときと同じく、小惑星の観測だろう。1998 KY26はリュウグウと同じC型小惑星の可能性があり、もし同じであれば、観測機器的には好都合だ。

到着はしばらく先ということもあり、具体的な計画についてはまだ決まったことはないそうだが、アイデアとしてはいろいろ考えられている。その1つはタッチダウンだ。

探査機にはもう再突入カプセルはなく、地球に帰還する燃料も残っていない。もちろん、サンプルを採取しても、持ち帰ることはできないのだが、探査機には未発射の弾丸が1発残っている。地表でこれを撃ち込み、衝撃で舞い上がる砂礫を観察すれば、得られる科学的成果もあるだろう。

またターゲットマーカーも1個残っているが、1998 KY26は高速に自転しているため、地表では重力よりも遠心力の方が大きく、その場に留まることができない。リュウグウのようにターゲットマーカーを目印にしたタッチダウンはできず、地形を自動で認識するような新たな技術が必要になり、そういった新技術を試す場にもなり得る。

そしてもう1つ注目は、2026年7月に近くを通過する予定の小惑星「2001 CC21」だ。ランデブーはできないのでフライバイ観測となるのだが、はやぶさ2はもともとランデブー向けの設計のため、フライバイ観測に便利なカメラの首振り機能などは搭載していない。どうやって撮影し、どんな画像が届くのか。非常に楽しみなところだ。