宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月29日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する記者説明会を開催し、プロジェクトの体制変更について発表した。はやぶさ2プロジェクトは同30日をもって解散。7月以降は規模を縮小した拡張ミッションに移行し、新たな小惑星を目指す。新しいチームも、引き続き津田雄一プロジェクトマネージャが指揮を執るという。
大きな節目を迎えたはやぶさ2
はやぶさ2は、2020年12月に地球に帰還。小惑星リュウグウのサンプルが入ったカプセルは無事オーストラリアで回収され、これまで、その科学分析が進められてきた。初期分析では多数の論文が発表されており、ようやくプロジェクト全体の評価が完了したため、このタイミングでの体制変更となったようだ。
はやぶさ2の成功基準(サクセスクライテリア)には、項目として理学目標と工学目標が2つずつあり、それぞれに対し、最低限の要求であるミニマムサクセス、ベースラインとなるフルサクセス、可能なら狙いたいエクストラサクセスが設定されている。はやぶさ2は、この全てを達成と評価。まさに、完璧な成功と言える。
「はやぶさ2プロジェクトとしては最後の会見になる」として、津田プロマネは、プロジェクトを総括。「ここまでやり遂げることができて満足している。終わってしまうことに寂しさもあるが、探査機がまだ宇宙に残っているというのは、自慢できること。拡張ミッションでは、面白い成果を期待している」とした。
サクセスクライテリアについては、「本当に挑戦的なことばかり書かれていて、これが本当に埋まるのか」と、当初は感じていたという。しかし、リュウグウでは様々な困難がありながらも、地下物質の採取にまで成功。「最高の形で、得るものがたくさんある形で埋めることができた」と喜んだ。
JAXA直轄のはやぶさ2プロジェクトは解散となるが、今後も探査機の運用は続いていく。拡張ミッションは宇宙科学研究所内の1事業という扱いになるため、これから津田プロマネは津田チーム長として、メンバーを率いていく。
ただ、拡張ミッションは「10年続く事業になる」と指摘。「私自身、10年やってきて、探査機の運用は一区切り付けたと思っている。新しい目的地に向かうのは、若いメンバーが中心となってやっていく」と、一歩引くことを示唆、「これは挑戦できる大変良い機会。若いメンバーが活躍できる場を作っていきたい」と抱負を述べた。
7月以降のプロジェクトは、「はやぶさ2拡張ミッション」が正式名称となる。ちょっと長いこともあり、新たに愛称として「はやぶさ2#」という名前が与えられた。#(シャープ)は英語で書くとSHARP。これは、“Small Hazardous Asteroid Reconnaissance Probe”のアクロニム(頭字語)になるという。
はやぶさ2#の目的地となる「1998 KY26」は、直径わずか30m程度という非常に小さな小惑星。こういった小さな天体は数が多く、100年~200年に1回程度の頻度で地球に落下することが分かっている。接近して観測し、特性を理解することは、プラネタリー・ディフェンスの面でも、大きな貢献が期待される。
このSHARPというアクロニムは、これを端的に表したものだ。また、そのまま日本語に訳すと“尖っている”となることから、より挑戦的、という意味も持たせたという。
そして新たなアウトリーチとして、「星の王子さまに会いに行きませんか ミリオンキャンペーン2#」を実施する。一般から、全角32文字/半角64文字以内のメッセージを募り、それを探査機に送信して、メモリーに書き込むという。募集期間は7月11日から12月6日まで。WEBでメッセージを入力すると、記念に“拡張ミッション乗車券”が発行される。