1年半かけて開発された「植物性培養フォアグラ」
Dr.Foodsは、植物性の培養フォアグラを開発したことを発表。6月28日にハンバーガーショップ「WAYBACK BURGERS 表参道店」で行われた記者発表会では、同店舗にて期間限定で販売される、植物性培養フォアグラを使用したハンバーガーの新商品が発表され、試食会が行われた。
Dr.Foodsは、「Save the Earth with the power of science」というテーマのもと、培養肉や遺伝子組み換え大豆、微細藻類などの研究開発に加え、培養肉・植物性代用食品の企画・製造・販売を行っている。
世界で生産が制限されるフォアグラ
おもにフランス料理で使用される高級食材で「世界三大珍味」とも称されるフォアグラは、ガチョウやアヒルの育成過程で行われる強制給餌の問題から、欧米などで生産や販売に対する規制の動きが見られる。
日本でもその影響からフォアグラの輸入量が限られ、さまざまな飲食店でフォアグラを使用した料理の提供が難しくなっている現状があるという。
これを受けDr.Foodsは、同社の執行役員を務めるフランス人生物学博士のAlexis Guionet(アレクシ・グイヨネ)氏を中心に、動物に負荷を与えずに生産が可能な植物由来の培養フォアグラを開発するに至ったとのことだ。
味わいを再現するカギは「発酵」
同製品の開発においては、脂肪分が6割を超えるフォアグラ特有の濃厚さやほのかな甘味などを再現するため、さまざまな食材で試作を繰り返したという。そして、Dr.Foodsの開発担当者たちが試行錯誤の末にたどり着いた食材は、カシューナッツと麹だった。
カシューナッツを麹によって特定の温度で発酵させ、それを再度特定の温度で発酵させたものを原料とすることで、フォアグラ特有の濃厚さや甘味・旨味を再現するに至ったという。アレクシ博士は会見で、「日本の発酵技術を参考にすることで、より本物のフォアグラに近い味わいを再現できた」と語った。
商品化に向けてさらなる試行錯誤
また、植物性培養フォアグラの商品化にあたっては、食品工場を持つマーマフーズとの協力が行われた。
同社開発室の及川咲貴室長によると、従来使用していない原料が多く、Dr.Foodsから共有されたレシピ通りに作業しても食感などがうまく再現できず、製品化への課題は多かった。さらに、フォアグラに多く含まれる脂肪分を、融点が低い植物性原料で再現しているため、固形として焼く調理に耐えるよう改善するのに苦労したという。
それでも細かな配合変更など試行錯誤を重ねることで、安定した生産方法を構築し、商品化にたどり着いたとのことだ。
完全植物性のフォアグラバーガーを期間限定販売
今回発表された植物性培養フォアグラは、WAYBACK BURGERS 表参道店の期間限定メニューである完全植物性のハンバーガー「NEXTフォアグラバーガー」として、2022年7月2日より提供される予定で、価格は1,800円とのことだ(販売期間については、まずは2022年8月末までを予定、としている)。
また植物性培養フォアグラ単体の商品としては、瓶詰めされたペーストタイプ(60g)と、ロッシーニ状のパテタイプの2商品が販売される予定だ。
現時点で、瓶詰めは690円、パテタイプは1切れ450円となる見込みで、前者は小売りを、後者は飲食店への販売を主な販路として想定しており、Dr.FoodsのECサイトでも販売を計画しているという。