具体的には、バイオバンク・ジャパンやUKバイオバンクなどにより収集された計84万人のヒトゲノム情報を用いた解析を実施。解析対象には、両バイオバンクで共通して登録されていた自己免疫疾患(関節リウマチ、バセドウ病、1型糖尿病)と、アレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症)が含まれ、追認解析には全身性エリテマトーデスや乾癬も対象とされた。
その結果、自己免疫疾患とアレルギー疾患は、ゲノム情報からも2群に分類することができたとする。その違いは、(1)自己免疫疾患においては疾患リスクが「HLA遺伝子領域」に集中していること、(2)アレルギー疾患においては疾患リスクがサイトカイン遺伝子領域に偏ってゲノム上に散在していること、の2点に起因していたという。
一方、部分的には共通の疾患リスクを示す遺伝子領域も存在しており、今回の研究では4か所の遺伝子多型が新規に同定されたとする。その中には、東アジア人集団において特異的に観測される「G3BP1領域」の遺伝子多型や、多様な集団間で共通した効果を示す「POU2AF1領域」の遺伝子多型などがあった。
G3BP1はI型インターフェロン発現に関わる遺伝子であり、POU2AF1はB細胞において抗体産生に関わる遺伝子とされている。これらの領域の遺伝子多型はそれぞれの遺伝子発現量を減少させることで疾患リスクを低下させることが示唆されたとする。
また、今回の研究では自己免疫疾患との統合解析を通して、アレルギー疾患の遺伝的リスクに自然免疫に関わる遺伝子や免疫細胞が関連していることも明らかにされた。
なお、研究チームでは今回の研究成果によって、免疫システムの異常とヒトゲノムの関連の解明が加速することが期待されるとしているほか、今回、同定された疾患間で共通する遺伝子は免疫系を制御する鍵遺伝子として、マルチターゲットの創薬標的となる可能性があるとしている。