オリックス・レンテックの残価設定型レンタルサービスで安価な導入を実現

今回稼働を開始したAIクライオ電子顕微鏡は、オリックス・レンテックが提供するサービス「Lレンタル」を活用して導入された。Lレンタルはレンタル契約満了時の機器の市場価値を査定し、残存価値の算出を行い、算出した残存価格を物件価格から差し引いてレンタル料を算出することで、リーズナブルな料金で高額な機器の利用を可能とするもの。原則12か月から60か月まで、1か月単位でオリックス・レンテックが保有しない機器であっても、オリックス・レンテックがメーカーや代理店から購入してレンタル提供することが可能で、内閣府の共創的研究費制度の活用も可能なことから、オリックス・レンテック側も、こうした取り組みを通じて、さらに広く学術界で同サービスの活用を図っていきたいとする。

  • AIクライオ電子顕微鏡

    6月より本格稼働を開始したAIクライオ電子顕微鏡

  • クライオ電子顕微鏡室の隣に設置された制御室

    クライオ電子顕微鏡室の隣に設置された制御室。2つの仕様の異なるカメラが別々に撮影を行うことができる

オリックス・レンテックの代表取締役社長である細川展久氏も同サービスについて、「初期費用を平準化することによるコストメリットと、機器の導入から活用まで最適なライフサイクルマネジメントを提供するサービス」と説明。日本が競争を勝ち抜くためにはオープンイノベーションの活発化が必要であり、第一線で産学官連携を進めている東北大が、こうしたサービスを活用してもらうことで、日本の科学技術の向上による産業の活性化、ならびに社会の豊かな未来の創造につながると、今回の枠組みの意義を強調する。

今回のLレンタルの期間は最長契約期間となる5年(60か月。期間は2022年4月~2027年3月)で、月間のリース料は715万円(税込み)で、契約期間満了後は返却、契約延長、時価買取のいずれかを選択することができる。

また、AIクライオ電子顕微鏡を利用するユーザーの費用は学内外問わず1日あたり50万円としている。

  • AIクライオ電子顕微鏡

    AIクライオ電子顕微鏡。目の前にあるのは冷却用の窒素が入っているタンク

このほか、クライオ電子顕微鏡を販売するJEOLの代表取締役社長兼COOの大井泉氏によると、「AI部分は東北大 多元物質科学研究所の米倉功治 教授が開発したものであり、JEOLとしては今回のAIクライオ電子顕微鏡のベースとなっているJEM-3300の販売を進めていく」としている。

  • 関係者による記念撮影

    関係者による記念撮影。左から東北大 多元物質科学研究所 副所長の福山博之 教授、東北大の青木孝文 理事・副学長、東北大 多元物質科学研究所 所長の寺内正己 教授、東北大の大野英男 総長、オリックス・レンテック 代表取締役社長の細川展久氏、日本電子の代表取締役社長兼COOの大井泉氏、東北大 多元物質科学研究所の米倉功治 教授、同 陣内浩司 教授

なお、青葉山新キャンパスに建設中の次世代放射光施設(愛称はナノテラス)は2023年度の完成、2024年度の運用開始が予定されており、東北大では、今回のAIクライオ電子顕微鏡によるタンパク質と有機材料などの二刀流に加え、ナノテラスとAIクライオ電子顕微鏡による相補利用で硬い材料から柔らかい材料まで幅広く可視化していくことを目指すとしており、同大の大野英男総長も、「先人が見たくても見れなかった新たな世界を可視化することは、世界のマテリアル研究に大きなインパクトを与えるものと確信している」とし、まずはAIクライオ電子顕微鏡の学内外への提供により、産学連携、企業との共同研究が強力に推進され、世界をリードする研究成果のみならず、持続可能な社会の実現に貢献する新たなイノベーションの創出などにつなげていきたいとしている。

  • 次世代放射光施設(ナノテラス)とAIクライオ電子顕微鏡により、さまざまな物質の計測が可能となる

    次世代放射光施設(ナノテラス)とAIクライオ電子顕微鏡により、さまざまな物質の計測が可能となる (出所:東北大発表資料)