プロバイオティクス試験食品の摂取については、対象者をランダムに2群に分け、ビフィズス菌を200億個含む粉末、またはプラセボ粉末を1日1スティック、24週間摂取。そして、認知機能検査(ADAS-Jcog・MMSE)が摂取前と摂取の8週間後、16週間後、24週間後の4回にわたって実施され、脳萎縮度(頭部MRI(VSRAD))と腸内細菌叢解析(糞便採取)が評価摂取前と24週間後の2回実施された。
ADAS-Jcogによる認知機能検査では、ビフィズス菌摂取群はプラセボ摂取群と比較して評価項目の「見当識」が有意に改善されていることが判明したほか、MMSEによる認知機能検査でも、認知機能が低い(MMSE<25)サブグループにおいて「時間の見当識」、「文章書字」の項目が有意に改善していることが示されたという。
また、認知障害と関連がある脳萎縮の状態を確認するツールとして、大脳萎縮の評価に有用とされているVBM解析手段の中から、今回は日本国内で広く使われている、MRIで取得された脳画像情報をコンピュータ処理して診断支援情報を提供するプログラム「VSRAD」を用いて脳の萎縮状態が検証されたところ、ビフィズス菌の摂取前と摂取24週間後の脳萎縮状態の変動値比較から、全脳萎縮領域の割合の変動において、脳萎縮の進行度合いに両群間で有意差が確認され、プラセボ群に比べてビフィズス菌摂取群では脳萎縮の進行が抑制されていることが確認されたともする。
さらに、MMSEで認知機能が低い群(MMSE<25)と高い群(MMSE≧25)とでのサブグループ解析が行われた結果、認知機能が低い群において、ビフィズス菌の占有率が低いことが確認されたという。
ビフィズス菌は、加齢とともに減少することが知られているが、今回、ビフィズス菌を摂取することでMCI患者の認知機能が改善することが確認されたことから、研究チームでは今後、腸の環境と脳機能との関連性について、実地医療の視点で確認していきたいと考えているとしている。
具体的な例としては、認知機能の低下を招く疾患へのプロバイオティクスの効果や神経疾患と腸内環境の関連性や、プロバイオティクスの作用・効果などについての検証を挙げており、その検証を進めることで、今まで治療が難しかった領域について、腸内環境ならびに脳と腸との連関に注目することで、新たな光が見えてくる可能性が考えられるとしている。
また、今後、認知障害やうつ病などの増加する神経精神疾患に、いかに脳腸相関が関与するかなどについて、同大学に開設されたジェロントロジー研究センターおよび腸内フローラ研究講座にて研究を推進していきたいとしている。