アルギン酸とPHB生産は競合するため、アルギン酸合成を遮断することにより、PHB生産が向上することが知られている。そこで、アルギン酸合成欠損株を用いてPHBの大量生産が試みられ、PHB生産性は、ガスクロマトグラフィーによる評価が実施された。

野生株とアルギン酸合成欠損株の乾燥菌体が酸性条件下で熱処理され、PHB分解物の定量が行われたところ、培養開始48時間以降から両株ともPHBの生産が認められ、野生株と比較して、アルギン酸合成欠損株ではPHB生産量が培養液あたりで約10倍、細胞あたりで約4.6倍に増大していることがわかった。このことから、廃グリセロールからPHBを生産する場合においても、アルギン酸合成経路を遮断することが有効であることが明らかになったとする。

今回の研究により、生育に窒素源を要しない環境調和型・低コスト型の新たな発酵生産システムが開発されたこととなる。研究チームでは今後、この結果を踏まえ、BDF製造から生じる廃棄物のリデュース、廃グリセロールのリユース、廃食用油のリサイクルの3Rを強力に推進することができるようになるとするほか、大気窒素と廃グリセロールから、アルギン酸やPHBだけではなく、アミノ酸や有機酸の生産も目指すとする。また、今回の研究による大気窒素活用型微生物発酵モデルの確立は、「化学的窒素固定」から「生物学的窒素固定」へシフトする端緒につながり、持続可能な循環型社会の形成に貢献するとも説明しており、この次世代型微生物発酵技術が確立されれば、日本の各種発酵産業(アミノ酸、有機酸など)とも連携することにより、窒素循環型社会を構築する新たな産業分野の開拓も期待されるとしている。