その結果、長時間労働は心身のストレス反応に直接的には影響しない一方で、食事の不規則さと睡眠時間の短縮を招き、それらがうつや心身のストレス反応を生じさせること、そしてこれらの間接的な効果を介して、長時間労働はうつや心身のストレス反応に影響していることが明らかになったという。これは、食事と睡眠を媒介因子とする、完全媒介効果が示されたものであると研究チームでは説明する。
またこの結果は、長時間労働そのものがメンタルヘルスに対して直接的に悪というわけではなく、メンタルヘルスに強く影響することが知られている要因である「睡眠不足」と「食事の規則性」が長時間労働の結果損なわれていくことが、間接的にうつや心身のストレス反応を引き起こしているということを、統計的に有意に示す結果であるともする。
ただし、就労者のメンタルヘルスを守るためには、単なる労働時間の削減、残業時間の総量規制だけでは不十分であり、労働時間を削減しても、睡眠時間の不足や食事が不規則であり続ければ、メンタルヘルスの改善効果はないことが示されたほか、もし長時間労働が存在していたとしても、睡眠時間が確保され、食事も乱れることがなければ、メンタルヘルスに与える影響は限定的であることも示されたことを受け、研究チームでは、あまりに長すぎる残業だと、必然的に睡眠時間が減少してしまうため、何らかの上限あるいはインターバル勤務などには意味があると思われるとしている。
なお、今回の研究は、職域のメンタルヘルスの改善と不調の予防のためには、適切な睡眠や食生活を維持するための方策が必要であることを示すものであり、職域における睡眠指導や通勤時間の削減、昼食あるいは夕方における食事休憩の取り方に関する工夫などが望まれるとする一方で、今回は横断的な研究であり、因果関係は証明されていないともしており、今後の適切な介入研究での実証が望まれるとしている。