また、東京財団政策研究所主席研究員の柯隆(か・りゅう)氏が「高まる地政学リスクと中国を中心とするサプライチェーンの再編」と題した講演を行った。今日のウクライナは明日の台湾になる可能性が高いと述べ、中国国内で起きている様々な変化について説明した。

中国では、以下のような変化がみられるとした。

  1. 高度成長期が終了し、安定成長の段階に入った
  2. 産業構造の高度化が不可欠である
  3. サービス産業の充実が必要である
  4. 人口減が避けられない
  5. 人口の高齢化により社会保障負担が増加する
  6. 世界の工場からむしろ世界の市場へ変化する

さらに、SUMCOの代表取締役 社長である阿波俊弘氏が「新しい成長段階に入った半導体産業」と題して講演を行った。

その中で、シリコンウェハ製造の今後の数量予想について以下のような見方を示した。

  • すでに生産数量の7割が300mm化している
  • シリコンウェハ製造の2022-2026年の年間成長率は9.4%、なかでもファウンドリ用の300mmウェハの成長率は11.6%と高い。7nm以下のプロセス用ウェハに限れば19.2%とさらに高い

加えて、半導体産業全般の現状と今後の投資に関しては、シリコンウェハサプライヤの立場から以下のように述べた。 

  • TVなどの家電のIC化やデジタル化、コンピュータのパーソナル化、モバイル化によって半導体市場と同様にシリコンウェハ市場は高成長してきた。その後、合理化、効率化で半導体業界の再編と集約が進み、地域の集中や余剰力の減少で市場変動への対応力が低下している。サプライチェーンのロバスト化、および地政学的リスクへの対応が重要になって来ている。
  • 重要な社会インフラである通信ネットワークやデータセンタの高度化・大容量化は、メタバースや自動運転など新しい高度なサービスを実現し、今後、半導体需要をけん引する。
  • 増え続ける半導体需要を満たすため、半導体各社では積極的な設備投資が続いている。シリコンウェハも300mm先端プロセス用を筆頭に高い需要増加が続いている。
  • 半導体は欠かせない存在であり、SDGsに代表されるさまざまな社会課題の解決に対しても、半導体の果たす役割は大きい。

同イベントの最後は講演者らによる「2022年世界経済・半導体展望」と題するパネル討論が行われた。なお、6月末までOmdia Global Semiconductor DayのWebサイトにてオンデマンドで同日の講演を無料視聴可能(登録必要、英語への同時通訳付き)となっているので、興味のある人は視聴してみると良いだろう。なお、次回のGlobal Semiconductor Dayイベントは2022年11月に開催される予定だという。