自国のネットワークを守り続けるウクライナ

このような状況を鑑みてヒッポネン氏は「では、サイバー攻撃でロシアは何を達成できたのでしょうか?何かは達成できたかもしれませんが、今回の侵攻はさまざまな側面で失敗しているという認識が高まっています」と現状を紐解く。

例えば、侵攻直後にポーランドに避難しようとするウクライナ人の交通渋滞が発生し、国境の直前で6~7時間待機しなければならなくなったが、これはロシアによるサイバー攻撃の影響だったとしている。つまり、GPSシステムを混乱させたサイバー攻撃で国境のオフィスが混乱し、渋滞が発生してウクライナ人が避難できなかったものの、いま現在でもウクライナは自国のネットワークを守れているという。

ヒッポネン氏は「侵攻前の8年間、ウクライナはロシアからさまざまなサイバー攻撃を受けており、侵攻後には3倍に拡大していますす。このように、ロシアは多くのサイバー攻撃を仕掛けていますが、ウクライナが自国のネットワークを守れているという事実は、攻撃が成功していないという証左です。もちろん、この結果はウクライナだけではなく、西側諸国の支援もあります。一例として、マイクロソフトやアルファベットなど米国の大手IT企業の活動も影響しています」と示唆した。

実際、ロシアに対する大手IT企業の動きは活発的であり、これまで起きたことがなく、西側諸国のこうした行動は明らかに「ウクライナととも」にという“姿勢”を示しているという。ロシアが幾度となくウクライナ国内におけるエネルギーネットワークの切断を試みているが、成功はしていないとしている。

そして、同氏は「全世界への教訓ですが、サイバー攻撃が単なる犯罪行為ではなく、戦争行為であるといった判断をどのようにすればいいのか、ということです。これがサイバー兵器です。効率的かつ低価格、攻撃を否定することができるのです・サイバー攻撃の大半は犯罪者です。サイバー犯罪者は旧ソ連国家に多く存在し、ウクライナ侵攻後にランサムウェア攻撃が減少しました。従来は攻撃を仕掛けていた人々が現在は武器を持って自国を守っているのです。それと同時にロシアのサイバー犯罪グループがロシア政府に従事するようになりました。現実として、Contiはロシア政府を支持する声明を出しています」と説明する。

ヒッポネン氏は、戦時下ではコネクティビティ(接続性)が重要となり、ローカルの電気通信企業をサポートする必要があるという。ウクライナはコネクティビティを守り切れていることから、どのような状況にウクライナが陥っているのかを世界が把握することができ、ゼレンスキー大統領が立ち向かう戦争を実際に目にできることは、コネクティビティの賜物だとしている。

そして、最後に同氏は「われわれがウクライナをサポートすることは、民主主義をサポートすることです。この戦争における動画・画像でロシア軍車両にペイントされたZという文字があります。これが何を意味するのか皆さんはご承知のことかと思います。キーボードの“Ctrl Z”の意味は『元に戻る』です。そのため、これからわれわれはCtrl Zを押すことで戦争前の状態に戻るべきなのではないかと考えています」と述べていた。

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