非ニュートン性流体では、ニュートン性流体と違い、粒子が一様には分散せず、異なる形状ごとに流れる方向に対し垂直の剪断方向へ自ずと配列する。このような、マイクロ流体中での微粒子の挙動を利用して、単純な構造の流路に異なる形状を有するサンプルを通過させるだけで自律的に、形状ごとに分離させる技術が実現できるのだという。
今回は、精密加工されたマイクロスケールの流路に薬品処理により、さまざまな形状になった大腸菌が流されて試験が行われた。その結果、アスペクト比が低い(=全長が短い)大腸菌はアスペクト比が高い(=全長が長い)大腸菌と比較してより流路中央に近い位置を流れることが確認された。この現象を利用して、マイクロ流路の位置ごとに異なる流路に誘導する分岐流路を組み合わせることで、大腸菌を形状アスペクト比ごとに分離することが可能となったとする。
開発されたマイクロ流体デバイスは、直線上の流路と断面が徐々に広がった形状の流路、出口流路の3種類の流路で構成されており、このデバイスを用いることで低アスペクト比の大腸菌(アスペクト比1)は97.6%、高アスペクト比の大腸菌(アスペクト比>2)は80%の純度で分離することに成功したという。
今回、菌類の一種である大腸菌を、形状ごとに分類することが可能であることが示されたことを受け、研究チームでは、デバイス構造が単純なため低コスト化や量産化が容易であり、これを応用することにより、創薬、疾病治療、さらに生命科学研究の質や効率の向上が期待されるとしている。