今回ヒロテックによって開発された技術は、金属表面にナノレベルの酸化物粒子をクラスター状に構造配置することにより、これを金属触媒として樹脂の最表面を理想的な化学状態に分解。金属酸化物粒子と樹脂表面を化学的に結合させることで、フッ素樹脂と金属の高強度直接接合を実現したという。表面処理などがない状態でのPTFEの接着力を1とした場合、今回の技術による接着力は48倍にもなるという。既存の技術ではテトラエッチ処理が39倍で、それを上回る接着力が実現されたこととなる。
それに加えて、ヒロテックで開発された加熱と加圧を同時に行う接合装置により、樹脂に対し環境負荷の高い化学的な表面処理を行うことなく、従来技術と比較して高い接合強度の25mm当たり120ニュートン以上が実現され、接合速度も1分当たり1000mm以上という高速接合を可能にしたとする。
さらに、同技術による接合強度は-30℃~175℃の幅広い温度環境で維持されることも確認された。これにより今後、寒冷地での使用のほか、アスファルトの運搬時など、さまざまな環境下での使用や幅広い分野への適用が期待できるとしている。
今回開発されたPTFEとステンレス鋼板の直接接合製品は、大蓉ホールディングスのダンプカーに荷台の隅角(ぐうかく)部に取り付け、関東圏の実際の運行環境下で2年3カ月間の社会実装試験が実施された。
その結果、目標である荷台への付着残土ゼロと十分な耐久性が確認された。その効果は、年間9万3800kL(2030年市場普及想定数6万台)の燃料消費量削減に相当することが確認されたという。また、大林道路は実際のダンプカーの運行環境を模擬した加速促進試験を実施し、接合耐久および潤滑性能は5年以上と評価された。さらに、こうした運搬効率の向上により清掃作業の負担が軽減され、転落事故などのリスクも低減したとする。
ヒロテックは、今回の研究開発終了後に開発製品の量産を開始し、2022年3月に初出荷を完了。大蓉ホールディングスは傘下の会社を販売窓口とし、まずは関東地方を中心に同製品の販売、車両への取り付けを行っている。
さらに、ヒロテック、大林道路、大蓉ホールディングスの3社は、豪雪地帯での堆雪運搬をはじめとして、同技術の適用範囲の拡大に向けた検討を重ねるとしている。また同技術を進化させるべく対象樹脂や金属種の拡大を図り、さまざまな分野の軽量化などの課題解決を実現し、さらなる省エネ化などへの貢献を目指す計画だ。
そしてNEDOは今回の技術開発をはじめ、今後も経済成長と両立する持続可能な省エネルギーの実現を目指し、「省エネルギー技術戦略」で掲げるエネルギー・産業・民生(家庭・業務)・運輸部門などにおける重要技術を中心に、2030年には高い省エネ効果が見込める技術について、事業化までシームレスに開発を支援するとしている。