情報通信研究機構(NICT)は6月1日、従来は損失が大きくて利用できなかった可視光において高効率に動作する「有機電気光学ポリマー(EOポリマー)光変調器」を開発したことを発表した。
同成果は、NICT 未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター ナノ機能集積ICT研究室の鎌田隼研究員、同・山田俊樹主任研究員、同・大友明室長らの研究チームによるもの。詳細は、光学とフォトニクスに関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Optics Express」に掲載された。
情報量の増加に伴い、より高速かつ大容量な光通信技術が求められている。インターネットなどの情報通信において欠かせないキーデバイスが、電気信号を光信号に変換する光変調器であり、その性能向上に向け、従来のニオブ酸リチウム(LN)光変調器に対し、高速かつ低消費電力なEOポリマーを使った光変調器の開発が進められている。
またEOポリマー光変調器を応用すると、光ビームを高速に走査することが可能となるが、立体ディスプレイなどの表示デバイスに使用するためには、可視光で利用できる必要がある。しかし、これまでのEOポリマー光変調器は光通信に使われている近赤外光しか利用できず、可視光では損失が大きくて利用できないという課題を抱えていたという。
そこで研究チームは今回、近赤外光よりも短い波長である可視光で、吸収損失が小さく、高い電気光学係数を持つEOポリマーの開発することにしたという。NICTが持つ正確な測定技術と、長年蓄積されてきた膨大な分子構造ライブラリに基づく分子設計により、その開発に成功した。