具体的には、分子中にフッ化アルキル基を導入することにより、真空蒸着過程の薄膜表面における表面エネルギーが調整され、フッ化アルキル基が表面側に優先的に配向するように制御。このような分子デザインにより、アモルファス性が維持されつつ、一部の有機分子が同一方向に配向するため、大きなGSPが得られるという。

  • 今回の研究で開発された分子の一例

    今回の研究で開発された分子の一例(6F-2TRZ)と、分子間PDM配向(GSP発現)のメカニズム (出所:九大プレスリリースPDF)

また、フッ化アルキル基と組み合わせる官能基の性質により、分子内PDMの方向と分子運動性が調整され、蒸着薄膜におけるGSPの極性および大きさが制御できることも明らかにされた。

開発された有機分子を用いた有機自発配向分極膜は、100nmの膜厚で±10V以上のGSPが示された(GSPスロープ:±100 mV nm-1以上に対応)。これは膜厚1μmの場合、GSPが±100V以上に達することを意味し、実用化されているエレクトレット材料の性能に匹敵または凌駕する値だとする。

  • 今回の研究で試作された振動発電素子の概略図

    (左)今回の研究で試作された振動発電素子の概略図。(右)その出力特性 (出所:九大プレスリリースPDF)

自発配向分極薄膜は、有機EL素子などの電荷注入特性に大きく影響することから、今回の研究成果により、有機EL素子のさらなる低消費電力に寄与できることが期待できると研究チームでは説明するほか、極性の異なる自発配向分極薄膜をエレクトレットとして集積化することで、振動発電素子の発電効率を向上させられることも期待されるとしており、今後はさらなる材料開発を進めるとともに、応用・実用化を目指すとしている。