具体的には、核酸自動合成機で合成した5'リン酸化RNAに対し、m7Gジリン酸のイミダゾール活性化体を有機溶媒(ジメチルスルホキシド)中で反応させることで、95%という高効率で目的のキャップ構造付加反応が起きることが見出されたとする。このようにして合成したキャップ化mRNAは、実際に、ヒト培養細胞中において高い翻訳活性を示すことも確認したという。
今回の研究においては、「cap-2キャップ構造」と呼ばれる、RNA鎖の5'末端の2つの塩基が2'-○-メチル化されたキャップ構造を含む107塩基長のmRNAが合成され、このものが培養細胞において2'-○-メチル基を持たない「Cap-0キャップ構造含有mRNA」よりも2.6倍高い翻訳活性を示すことが明らかにされたほか、酵素合成法で合成された対照サンプルのRNA(IVT/ARCA)よりも5.7倍高い翻訳活性を示すことも確認されたという。
なお、現在、Cap-2キャップ構造を効率的に構築する方法は確立されていないことから、今回の手法は今後の応用が期待できると研究チームでは説明しているほか、非ヌクレオチド型の化学修飾(トリエチレングリコール)を導入したmRNAを合成し、その翻訳活性への影響が調べられた結果、導入位置が非翻訳領域の場合は、ほとんど翻訳活性を下げないことも判明したとのことで、この成果は、今後の化学修飾導入mRNAのデザインに役立つ知見としている。
さらに、化学合成mRNAには、任意の化学修飾を導入することが可能であることから、mRNAの安定性改善や翻訳効率の向上を目指すことができるとしており、今回の手法は、現存のmRNA医薬の活性を改善させる手法の有力なツールとして用いることが期待されるとしている。