生成物の水素を未反応メタンから分離する性能の指標である水素/メタン分離係数が245という高性能であると同時に、透過係数が5.8×106barrersと、従来の高分子分離膜の100倍以上の優れた分離性能を示す「グラフェン包接ゼオライト分離膜」の開発に成功したと発表した。
信州大学は5月25日、生成物の水素を未反応メタンから分離する性能の指標である水素/メタン分離係数が245という高性能であると同時に、透過係数が5.8×106barrersと、従来の高分子分離膜の100倍以上の優れた分離性能を示す「グラフェン包接ゼオライト分離膜」の開発に成功したと発表した。
同成果は、信州大 先鋭領域融合研究群 先鋭材料研究所のラドバン・クコバット特任助教、同・金子克美特別特任教授に加え、早稲田大学、ファインセラミックス センター、米・ミシガン大学の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国科学振興協会の刊行する学術誌「Science」系のオープンアクセスジャーナル「Science Advances」に掲載された。
クリーンエネルギーとして期待される水素だが、現在の精製手法の多くが天然ガスや原油に由来しており、分離まで含めると十分な脱CO2技術とは言えない。そのため、より少ないエネルギーで分離が可能な、優れた分離技術が求められるようになっており、そうした候補技術の1つとして高分子分離膜が注目されている。膜を大きくできること、分子設計の立場から分離係数を上げられるなどのメリットがあるという。
しかし高分子分離膜は、水素が膜内を透過する速度が極めて遅く、透過速度を上げるためには高い圧力をかける必要があるため、やはり多くのエネルギーを必要とするという課題があった。省エネルギーな分離を実現するには、従来の高分子膜を主とする分離膜の50倍以上の分離速度を実現する必要があることから、研究チームは今回、分離能と分離速度のどちらも優れるグラフェン包接ゼオライト分離膜を開発することにしたという。