具体的には、鍵パーツを組み込んだ0価ニッケル錯体をイオン液体へ分散させ、ここへCOを含む混合ガス(H2、N2、CH4)を流し込む。その結果、COのみがニッケル錯体に吸着され、新たな錯体(便宜上「錯体2」とする)が高収率で得られることが確認されたとする。
注目すべきは、CO/H2/N2混合ガスからのCO分離が高収率で達成されていることだという。そのため、今回の成果には、高純度H2製造プロセスとしても適用できる可能性が示されているとするほか、CO/N2混合ガスからのCO分離は工業的に困難なガス分離プロセスの1つながら、CO/N2混合ガスからのCO分離も高効率で行えることが確認されたとする。
実際に、今回の研究で開発された0価ニッケル錯体分散液を用いて、錯体2からのCO脱着→吸着の連続5サイクルが実施された結果、1サイクル目から2サイクル目にかけて、CO脱着効率が向上することが見出され、その理由を調べたところ、以下のような特徴が明らかになったという。
- CO脱着過程は、イオン液体へ分散した固体のニッケル錯体上で進行している。脱着後に再生する錯体はイオン液体へ十分に溶解するため、CO脱着後には均一溶液が得られる。
- CO吸着過程は、ニッケル錯体が溶解した状態で進行している。CO吸着後に、イオン液体に溶解しにくい錯体が自動的に再結晶して析出する。
- (1)→(2)の脱吸着1サイクル目を経て、錯体の結晶サイズが小さくなり、減圧にさらされる表面積が増加するために、1サイクル目→2サイクル目でCO脱着速度が上昇した。
この結果は、従来、必須である場合が多かったサンプルの結晶化が、今回の研究においては必須ではない(イオン液体中で自動的に再結晶するから)ことが示されているとしている。
なお、新たなメカニズムで駆動する、イオン液体を駆使したCO吸脱着システムを提案することで矛盾する2つの条件を両立できることが実証された点について研究チームでは、学術的にも意義深いといえるとしている。