プロジェクトワークの作法を確立 - コクヨの場合
基調講演では、コクヨとトヨタグループのウーブン・プラネット・ホールディングスにおける導入事例が紹介された。まずはコクヨから。同社は4月からSlackの本格導入を開始している。同社では、昨年2月に2030年に向けた長期ビジョンを策定しており、その中でオフィス家具や文房具だけでなく、働き方や学び方、暮らし方を提案する企業を目指している。同年には、現在の売上高3000億円から5000億円への成長を計画している。
コクヨ 代表取締役社長の黒田英邦氏は、Slack導入の背景について「当社が変革を実現するためには働き方を変えなければと考えた。これは組織横断的に自律的に動くプロジェクトワークの作法を身に付けるということだった。企業は大きくなればヒエラルキー、サイロ化が進行し、変化を避けてしまうという弊害があり、それを打破するために上から言われてやるのではなく、プロジェクトごとにテーマを持ち、メンバーが答えを出して仮説を回していくことが望ましい。会社は、そうした多くのプロジェクトを支える組織であるべきであり、そこで必要であると考えたものがSlackだった」と振り返る。
ただ、そのほかにもデジタルツールが多くある中でSlackを採用した理由については、プロジェクトワークの作法を軸に、双方向コミュニケーションやオープンコミュニケーション、know who(誰が知っているのか)の向上、バリューチェーン密着による業務効率化などに加え、1番のポイントとして同氏は「利用メンバーが自律的に使わないと成果は出ないが、Slackは使えば使うほど、つながればつながるほど、情報共有すればするほど価値が出てくる仕組みになっている。その点でSlackは有効な手段だった」と説明していた。
そして、今後のSlackの活用に関して黒田氏は「当社は製品、サービスを開発するにあたり、とりあえず社内で実験するという文化がある。そのため、Slackを使いながら当社のハイブリッドワークというものが、どのようなものなのかという実験をしていくほか、お客さまにも提案できるようにしていきたい」と語っていた。
One Teamの実現に向けて - ウーブン・プラネットの場合
続いて、ウーブン・プラネット・ホールディングス Vice President, Head of ITのジャック・ヤン氏が登壇した。
同ホールディングスでは、自動運転技術の実用化に向けた高品質なソフトウェアを提供や実証実験の都市として「Woven City(ウーブン・シティ)」の整備を進めている。
同ホールディングスのビジョンは「Mobility to Love, Safetey to Live」だ。ヤン氏は「未来のモビリティカンパニーとしてデジタル、ソフトウェアプラットフォーム、ツール、テクノロジーを活用した新しい顧客の可能性を実現するために、さまざな戦術を用いている。当社がなぜSlackの導入を決めたかと言えば、グローバルに展開するトヨタのOne Teamを実現してくれる」とSlack導入の理由を述べていた。
同ホールディングスでは、大規模組織向けプランのEnterprise Gridを導入している。グローバルな情報共有プラットフォームにより、コミュニケーションや課題解決、意思決定のスピードが向上に加え、情報共有が可視化されることから適切なタイミングで適切な情報を共有を可能としている。そして、さまざまなチーム、パートナー、地域を超えてOne Teamで仕事ができるからだという。
活用例としてはGoogle Workspaceや翻訳ツールをはじめとした外部機能との連携やITサービスデスクとの連携し、生産性の向上を図っていることに加え、「#happy-moments」というチャンネルでは家族の写真などを投稿しているという。
今後の展望について、ヤン氏は「Slackを活用して常に改善の機会がある。Slackを活用しながら従業員体験の向上を当社を含めたトヨタのグループ会社で実現していく。ただ単にアクティブユーザーの単純な指標だけでなく、テレメトリを活用しつつユーザーの行動様式を鑑みて、部門の垣根を超えたコラボレーションやオープンコミュニケーションができているのかという指標も想定している。正しい指標を使い、変化が必要であれば正しい方向に導いていく。そのほかのグループ会社や事業部門でもEnterprise Gridを導入し、パートナーとコラボレーションしながら、幅広い領域でコラボレーションを実行し、データの価値を引き出しながら顧客、社会の幸福度を向上させていきたい」とコメントしていた。