OKIグループで、信頼性評価や環境試験、製品安全試験といった事業を展開するOKIエンジニアリング(OEG)。

2022年4月1日付で中井敏久氏が新社長に就任した。技術者として多数の特許を取得するなど、長年、技術畑を歩んできた中井社長に、今後の抱負や、社長就任に際して思うことなどについてを伺った。

中井氏は、大阪府出身。大阪府立大学工学部を卒業後、1983年に沖電気工業に入社。総合システム研究所通信システム研究部デイジタル通信研究室に所属し、1989に南カリフォルニア大学工学部に留学後、修士課程を修了。2002年には研究開発本部情報サービスシステムラボラトリ ラボラトリマネージャを務め、2006年には研究開発本部ユビキタスシステムラボラトリ長に就任。

2010年に研究開発センタプロダクト開発部長、2011年に研究開発センタシステム技術研究開発部長を務め、2013年に研究開発センタスマート社会ビジネスイノベーション推進部長、2014年に次世代社会インフラ事業推進室チーフスペシャリスト、2017年に情報通信事業本部基盤技術センター長を歴任。

2020年には、OKIシーテックの代表取締役社長執行役員を務め、今回、2022年4月1日付でOKIエンジニアリングの代表取締役社長執行役員に就任することとなった。

2023年には、創業50周年を迎える会社ながら、「半導体真贋判定サービス」や宇宙分野向けの試験サービスなど、世間のニーズをとらえた新しいサービスを次々に展開するOEG。そんな挑戦し続ける技術の会社に中井氏はどのような思いを抱いているのだろうか。

  • 中井敏久氏

    2022年4月1日付でOKIエンジニアリングの代表取締役社長執行役員に就任した中井敏久氏

暗号の研究でキャリアをスタート、経営に携わるきっかけは技術移転の仕事

--4月1日から代表取締役社長に就任されましたが、現在の心境をお聞かせください

中井氏(以下、敬称略):OEGは、2023年に50周年を迎える歴史のある会社です。これまで安定的な実績を積んでいますが、世の中も年々変わってきています。例えば、電気自動車のCASEを例にとると、屋外の風雨にさらされる環境に電子機器を置くというのは昔であれば考えられなかったでしょう。

これからはIoTなども含め、屋外といった過酷な環境に電子機器を置くことが多くなってくるでしょう。それに伴い、車載、二次電池、宇宙・航空といった分野で我々の提供する試験の需要も増えてくると思うので、業績もグッと伸ばせるのではないかという期待があります。

--中井社長の経歴を拝見すると、30年以上にわたり研究職としてキャリアを積まれてきたと思います。これまで、どのような研究をされてきたのでしょうか。

中井氏:いろいろな研究をしてきました。会社に入社した時には、暗号の中でも「誤り訂正符号」の研究をしていました。そのころは、デジタル化の走りで、あまり研究者もおらず、研究も楽しかったので、暗号の研究をしようと、南カリフォルニア大学に留学しました。

留学すると、数学の天才みたいな人がたくさんいて、これはとてもかなわないと思ったのですが、留学先では暗号の基本を学びました。

留学から帰ってきたころには、OKIはその当時(1990年代)携帯電話を製造していました※1。そのころの携帯電話はアナログからデジタルへの移行期で、デジタル方式に変えるときに必要な信号処理の研究開発をしていました。

大阪に研究所に作ることになり、大阪出身だったのもあって、そちらに移り、テレビ電話などに使う画像通信である「MPEG-4」の研究をしていました。

その後はユビキタスシステムの研究を行いました。今のOKIでは、920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop」としてサービスを提供していますが、その始めのころの研究をしていました。

その後には、研究所から事業本部に移り、研究所からの技術のその際に、ソリューションシステム事業本部(現)のハードウェアを作る共通技術部門を担当していました。