D6モデルに基づいたIa型超新星残骸の姿を理論的に明らかにするには、2つのステップが必要だという。1ステップ目は白色矮星の爆発前後数十秒程度を追跡すること。そして2ステップ目は、爆発によって吹き飛んだ物質を数千年にわたって追跡することだとする。
1ステップ目については、スーパーコンピュータを使った爆発シミュレーションの先行研究があることから、今回の研究では、その爆発シミュレーションの結果を初期条件として、爆発によって吹き飛んだ物質の数千年にわたる進化を、超新星残骸シミュレーションを用いて追跡することにしたという。
今回の初期条件は、D6モデルに基づいた爆発50秒後の物質分布であり、白色矮星が単独であるなら、爆発によって吹き飛んだ物質は球対称に膨張していくはずだが、もう1つの白色矮星が存在することによって、飛び散った物質に「影」ができることとなり、この影こそがD6モデルの痕跡となるとする。
問題は、この影が超新星残骸になったときにどのように見えるのか、そしてそれがどのくらい長続きするのかであり、今回の研究から、爆発50秒後に存在した影は、ほぼ球対称な超新星残骸の中にぽっかりと空いた「暗い穴」とその周りを囲む「明るい輪」という構造へと進化したことが確認されたほか、この構造は、1000年以上の長い年月にわたって存在し続けることも示されたという。
この結果について研究チームでは、超新星残骸の特徴からIa型超新星の爆発機構に迫ることができることが示されているとしている。隣の銀河である大マゼラン雲にある超新星残骸SNR 0519-69.0やSNR N103Bの年齢は1000年程度であり、もしD6モデルに基づいてこれらのIa型超新星が起こったのだとすれば、これらの超新星残骸には「暗い穴」と「明るい輪」があることとなるはずで、今後の超新星残骸の観測指針となることが期待されるとしている。