水を推進剤にする超小型衛星用エンジン

東京大学発ベンチャーのPale Blueは、水を推進剤に使ったエンジンを展示していた。衛星の推進剤というとヒドラジンが一般的だが、信頼性が高い反面、有毒のため扱いが難しい。

その点、水であればまさに飲めるほど安全だ。有人のISS内でも扱うことができ、3Uサイズの実証機「AQT-D」が2019年に放出されている。

  • 右の1Uサイズでも十分小さいが、左は1/4Uサイズとさらに小さい

    右の1Uサイズでも十分小さいが、左は1/4Uサイズとさらに小さい

水のメリットはほかにもある。まず圧倒的な調達価格の安さ。また安全性の高さから、開発・運用コストも抑えることができる。

そしてさらに、宇宙に広く存在すること。月面や火星にも存在すると考えられており、現地調達が可能だ。大型化すれば、深宇宙での物資輸送に活用できるかもしれない。

同社は、水蒸気を噴射するレジストジェットスラスタ、プラズマ化してイオンを噴射するイオンスラスタ、両者を統合したハイブリッドスラスタをそれぞれ開発。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「革新的衛星技術実証3号機」にはハイブリッドスラスタが搭載され、宇宙空間で実証を行う予定だ。

  • 1Uレジストジェットスラスタを搭載した衛星のイメージ

    1Uレジストジェットスラスタを搭載した衛星のイメージ

実際のロケットで使われる部品がズラリ

インターステラテクノロジズ(IST)は、ロケットの部品を展示。

2機連続での打ち上げに成功した観測ロケット「MOMO v1」からは、ジンバルプレート、アビオボックス、燃料バルブ、開発中の超小型衛星用ロケット「ZERO」からはジンバルジョイントと、かなりマニアックなチョイスではあるが、実物が見られるのは非常に興味深かった。

  • 「MOMO v1」と「ZERO」の展示品。なぜこれを選んだ……

    「MOMO v1」と「ZERO」の展示品。なぜこれを選んだ……

  • ZEROのジンバルジョイント。これで推力の向きを変える

    ZEROのジンバルジョイント。これで推力の向きを変える

ZEROは、全高25m、直径1.7m、重量33トンの2段式ロケット。

燃料に液化メタン、酸化剤に液体酸素を使用する新型エンジンを、第1段に9基、第2段に1基搭載する予定だ。同ロケットにはさまざまな新規開発要素があるが、2023年の初打ち上げに向け、これから各種試験が本格化するだろう。引き続き注目していきたい。

趣味衛星がついに3機目、ミッションは何?

リーマンサット・プロジェクト(rsp.)は、趣味で宇宙開発を行う団体である。趣味ながら、すでに2機の超小型衛星の打ち上げを実現。ブースでは、次号機「RSP-02」のモックアップ展示を見ることができた。

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  • 次号機「RSP-02」も1Uサイズのキューブサットになる

    次号機「RSP-02」も1Uサイズのキューブサットになる

前号機の「RSP-01」は、1Uサイズながら搭載した伸展アームで自撮りするというユニークなキューブサットだったが、面白さではRSP-02も負けてはいない。

サイズは同じ1Uだが、なんと子衛星を搭載、軌道上で放出した子衛星を"人工星座"として撮影するという。RSP-02は2023年度の打ち上げを目指し、現在開発中だ。

  • 放出する子衛星。光る機能があり、これを撮影する

    放出する子衛星。光る機能があり、これを"人工星座"として撮影する