「2022国際ロボット展」の併催企画として、3月9日から12日にかけて東京ビッグサイトにて「国際宇宙産業展」(ISIEX)が初めて開催された。

第1回目ということで、エリアの規模はそれほど大きくなかったものの、いくつか面白い展示もあったので、ここで紹介したい。

なお同展示会は、2023年2月に第2回目が開催されることも決まったという。

  • 「国際宇宙産業展」は西ホールの一角で開催されていた

    「国際宇宙産業展」は西ホールの一角で開催されていた

YAOKIの最新型はボディがカーボン製に

ダイモンは、手のひらサイズの超小型月面ローバー「YAOKI」を出展。

YAOKIについては、すでに弊誌でも何度か取り上げているが、ブースでは、その最新のフライトモデルを見ることができた。

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  • 月面ローバー「YAOKI」。前面にはカメラを搭載している

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  • 上下対称の形状のため、ひっくり返っても普通に走行できる

    上下対称の形状のため、ひっくり返っても普通に走行できる

最新モデルでは、ボディの材質をアルミからカーボンに変えたほか、車輪の素材もさらに高性能なものに変更。

重量は従来モデルでもすでに約500gと軽かったのだが、これを約450gまで軽量化することに成功したという。打ち上げ(2022年予定)が大幅に遅れることがなければ、このモデルが月に行く可能性が高そうだ。

ブースの展示で面白かったのは、月面の縦孔探査をイメージしたデモコースが用意されていたことだ。

ロボット関係のデモでは通常、落下などは禁物。孔の中にストーンと落ちるのを見るのはちょっと怖いのだが、100Gの衝撃にも耐えられるYAOKIなら平気だ。実際、将来の縦孔探査では、普通に落とすことも想定されている。

  • 縦孔に接近するYAOKI。そのまま走行していくと……

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  • ストーンと落下。しかしYAOKIならこのくらいでは壊れない

    ストーンと落下。しかしYAOKIならこのくらいでは壊れない

縦孔探査のデモ

また今回、YAOKIをランダーに搭載するためのケースが初めて公開されていた。このケースは、ランダーの底面に設置。卵を割るようにカバーが開き、ローバーを月面に放出することができる。

  • ダイモンが開発したケース。YAOKIを格納し、展開するための機能を持つ

    ダイモンが開発したケース。YAOKIを格納し、展開するための機能を持つ

展開には、固定しているテグスを電熱線で切るという、超小型衛星でも良く使われている仕組みを採用した。

モーターなど、複雑な機構を持つものは、本質的に壊れやすいというリスクがある。電熱線なら、電気さえ流れれば確実にテグスを切断できるので、極めて信頼性が高い。超小型のYAOKIには、非常に適した方法と言えるだろう。

将来の月面基地では野菜を袋で育てる?

竹中工務店は、将来の有人月面基地での活用が期待される「袋培養システム」を展示していた。

現在、国際宇宙ステーション(ISS)では、宇宙飛行士のための食糧はすべて地上から輸送している。しかし月面となると、桁違いの輸送コストが必要。持続可能な長期滞在のためには現地生産が不可欠で、袋培養はそのための技術である。

  • 「袋培養システム」の展示(2/3スケール)

    「袋培養システム」の展示(2/3スケール)

袋培養は文字通り、袋の中で植物を栽培する技術だ。土を使わず、外気と隔離されているため、病害虫の心配がないのがメリット。

すでに、ISSではレタス栽培の実証が行われた実績がある。またブースでは、将来の月面農場の模型も展示されていた。居住エリアと栽培エリアがあり、20人の滞在が可能だという。

  • 左が常圧の居住エリア、右が低圧の栽培エリアになる

    左が常圧の居住エリア、右が低圧の栽培エリアになる