北海道大学(北大)、九州大学(九大)、東北大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の4者は4月27日、最古の太陽系物質である炭素質隕石から、全生物のDNAやRNAに含まれる、ウラシル(U)、シトシン(C)、チミン(T)、アデニン(A)、グアニン(G)の核酸塩基5種すべてを同時に検出することに成功したと発表した。

同成果は、北大 低温科学研究所の大場康弘准教授、JAMSTECの高野淑識上席研究員、九大大学院 理学研究院の奈良岡浩教授、東北大大学院 理学研究科の古川善博准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

地球上における最初の生命は、炭素質隕石や彗星などにより、40億年ほど前の地球上に供給された有機化合物を材料として誕生したとする説がある。それらの地球外物質にはアミノ酸など、生命を構成する有機化合物が含まれていることが知られており、有力な説の1つとされている。

しかし、生命の遺伝情報を担うDNAおよびRNAの核酸を構成する成分の1つである核酸塩基については、これまでに炭素質隕石から検出例はあるものの、その種類は限られていた。さらに、同種の隕石から核酸の二重らせん構造形成に不可欠なA-T、G-Cなどの塩基対が検出された例はなかったという。そのため、地球上での生命誕生前の遺伝物質生成に対する地球外物質の寄与については、懐疑的な意見があった。

  • 隕石による原始地球への核酸塩基の供給に関するイメージ

    隕石による原始地球への核酸塩基の供給に関するイメージ (C)NASA Goddard/CI Lab/Dan Gallagher (出所:NASA Webサイト)

一方で、地球外環境で種々の核酸塩基が生成可能だということが研究チームを含むこれまでの研究から明らかにされており、なぜ炭素質隕石から核酸塩基の検出例が少ないのか、興味が持たれていたとする。

そこで研究チームは今回、同チームが独自に開発した超高感度・超高分解能の分子レベル核酸塩基分析法を駆使して、炭素質隕石中に存在する核酸塩基(プリン・ピリミジン塩基およびそれらの構造異性体)や窒素複素環分子群の精密な化学分析を行うことにしたという。

「マーチソン」、「タギッシュレイク」、「マレー」という、アミノ酸など有機化合物を豊富に含む3種の炭素質隕石から核酸塩基が抽出・精製され、存在する分子種の多様性や存在量の分析が行われたほか、5員環および6員環の環状分子内に窒素を含む複素環分子群の解析が行われた。