東京大学(東大)にて開催された「Cool Chips 25」において、AMDはモバイル用SoC「Ryzen 6000(コードネーム:Rembrandt)」を発表した。

Ryzen 6000は2022年1月のCESで発表されているが、今回のCool ChipsはCESのようなマーケティング発表ではなく学会発表であるので、技術的に詳しい情報も含んでいる。

Ryzen 6000シリーズの特徴をまとめたのが、次の図1である。特徴は、第1にコアがZen3+に変更された点である。Zen3+はRyzen 5000に使われているZen3と比較すると消費電力が低減されており、性能/Wが改善されている。そして、GPU部分は最新のRDNA 2となっており、大幅な性能向上が行われている。

さらに、Ryzen 5000では7nmプロセスが使われていたが、Ryzen 6000では6nmプロセスが使われている。6nmプロセスの採用により、消費電力も低減しており、電力効率の改善にも貢献していると考えられる。また、Ryzen 6000ではLPDDR5メモリの採用、PCIe4.0、USB4、Wi-Fi 6Eの採用などCPU周辺のチップとの通信バンド幅が向上している。

  • Ryzen 6000シリーズの特徴

    図1 Ryzen 6000シリーズの特徴。なお、左側のチップ写真のように見えるものはダイフォトではなく、それらしい絵であろうと思われる (このレポートのすべての図はCool Chips 25の予稿集の図のコピーである)

Ryzen 6000は、8コア16スレッドのZen3+ CPUを搭載している。そして、新しいRDNA 2アーキテクチャのGPUを搭載している。半導体テクノロジは7nmプロセスから6nmプロセスに変わり、その分、チップ面積の縮小、消費電力の低減が行われている。さらに、PCIeやUSBの世代が新しくなり、すべてのプラットフォームが新しくなったと述べている。

  • Ryzen 6000のブロック図

    図2 Ryzen 6000のブロック図。左辺が128bitのメモリコントローラと6400MT/sのLPDDR5メモリバス。下辺、左から12CUのRDNA2 GPU、セキュリティ用のMicrosoft PlutonプロセサとAMDのセキュリティプロセサ、システムマネジメントユニット、マルチメディアエンジンである。上辺の左端が8コア16スレッドのXen3+CPUコアでそれに続いて、PCIe4.0、USB、NVMe、PCIe 4.0、SATA、ワイヤレス系のインタフェースが置かれている

実はRyzen 5000では、消費電力はIntelより大きくAMDの弱点であったので、Ryzen 6000では、電力低減に力を入れたようである。それが5層の電力最適化と書かれた次のスライドに纏められている。

物理層に近い方から、6nmプロセステクノロジ、コアアーキテクチャ、SoCアーキテクチャ、システムソフトウェア、プラットフォームにまとめられている。プロセステクノロジではTSMCのN6(6nm)プロセスを使い、性能向上と電力とチップ面積の低減を行っている。コアアーキテクチャではZen3+コアに移行して性能/電力の大幅な改善を実現している。

SoCアーキテクチャでは後述のように電源バスの分割を徹底し、無駄な電力の消費を極力抑えている。

  • Ryzen 6000の5層の電力低減

    図3 Ryzen 6000の5層の電力低減。第1層の削減はTSMCの6nm(N6)プロセスの採用

図4に示すように、コアアーキテクチャでも漏れ電流の低減や、各種の無駄な動作を減らす改善で消費電力を低減している。このような改善は50個以上の項目に上っている。

  • コアアーキテクチャによる電力効率の改善

    図4 コアアーキテクチャによる電力効率の改善。漏れ電流の最適化、PC6復旧でレスポンスを改善、スレッドごとの使用状態の通知など