半導体ファウンドリ分野の先端プロセス開発でTSMCの追撃を図りたいSamsung Electronicsだが、TSMCに先駆けて2022年上半期中に提供しようとしていた3nmプロセスについて、歩留まりの低迷が続いており、顧客企業の確保にも苦労していると韓国メディア「ニューデイリー経済」が報じている。
歩留まり低迷が続くSamsungの3nmプロセス
半導体ファウンドリ業界で圧倒的な存在感を示すTSMCは、先般行った2022年第1四半期決算発表会にて、2022年下半期での3nmプロセス(N3)による量産開始に自信を見せ、2nmプロセスについても2024年の試作、2025年の量産を計画していることを明らかにしている。
同社の関係者によると、3nmプロセスの生産量は量産序盤段階で月産3万~3万5000枚(300mmウェハ)で、HPCやスマートフォン用アプリケーションプロセッサなど、複数顧客から注文を受けているという。これに対して、Samsungは2021年、TSMCに先行して3nmプロセスの量産を達成することを目指していたが、高性能化を図ることを目的に採用を予定しているゲートオールアラウンド(GAA)構造(同社の呼称は「マルチブリッジチャネルFET(MBCFET)」)が思うように立ち上がらず、歩留まりが向上せずに苦労している模様である(TSMCは2nmからGAAを採用予定)。
GAAプロセスは、単結晶シリコン基板上に断面が長方形のシート状のSiGe層とSi層を交互にエピ成長させて、その後にSiGeを特殊な薬液を用いて選択エッチングで除去し、いわば基板と分離された中空状態のSi単結晶チャネルを多段に形成しなければならず、難度が相当高いプロセスとされている。
Samsungの3nmプロセスの歩留まりが安定するまでには1年近くかかる見通しで、同社が2021年に提示したスケジュールでの量産の実現は難しいという観測が出ているという。また、Samsungのファウンドリ部隊であるSamsung Foundryに対しては、内部からにも警戒心が高まっているという。同社は、過去に歩留まりデータを捏造していた疑いが出ており、新たにSamsung Electronics半導体(DS)部門のトップとなったキョン・ギョンヒョン氏を中心に、部門内の風通しを良くして、効率的な業務が可能な組織構造の改善に乗り出しているという。大胆な意思決定を迅速に下すことができるイ・ジェヨン副会長のような最高意思決定権者が不在という点が致命的だという見方が社内外に広がっているという。