ゼラチンの実験では、ゼラチンを固めたゲルを上下2層に並べる。上のゲルの濃度を高くした状態で下から温めると、まず、下のゲルが液体になり、次に上の層のゲルが下から液体になっていき、上の層の方が重いため、溶けた部分から徐々に落下する。粉体系の実験では、容器に砂を詰めておき、それをひっくり返す形で、周囲を空気や水、詰める角度など、条件を変えて測定が実施されたという。
その結果、粉体とゼラチンの重力下における振る舞いの様子のうち、砂が詰まった容器をひっくり返したときの様子から、粉体の落下運動の特徴である「finger(フィンガー)」と呼ばれる指状に落下していることが観察されたことから、落下途中において、フィンガーの間で新しいフィンガーが生成されるという特徴が判明したという。後者の新しいフィンガーの生成は、通常の流体の落下では見られた挙動だとしている。
ゼラチンを下から温めた観察でも、粉体系と同様に細いフィンガーが形成され、落下中に新しいフィンガーが生成されることが確認されており、このことから、粉体系とゲル系の落下挙動が類似していることがわかったという。
さらに、フィンガー間の距離に相当する特徴的な波長、フィンガーの成長速度の定量的な測定から、粉体系もゲル系も流動層の厚み(L)に比例していることが確かめられたとする。通常の流体系における「レイリーテイラー不安定性」(軽い流体の上に重い流体があるとき、界面が不安定化し、波打つこと)の波長は層の厚みに比例することが知られており、この関係は粉体系でも成り立つことも判明。これにより、流動層の厚みが時間変化する流体系と考えられることがわかったとした。
なお、今回の研究により、流動化した物理ゲルは流体近似が可能なため、粉体の運動は構成要素やフォースチェーンを粗視化した流体近似が可能であることが示されることとなった。流体系は古くから実験やシミュレーションが盛んに行われており、その知見と粉体の流体近似が組み合わさることで、ほかの集団運動の解明につながることが期待される研究チームでは説明しているほか、身近な存在である粉体の集団運動が理解されることで、社会全般へのフィードバックが期待できるとしている。