具体的には、CuxO/TiO2を観察したところ、TiO2粒子の表面に、大きさが数nmほどのCuxOが分散して担持されている様子を確認。CuxOには、暗所での抗ウイルス効果を発揮する1価と、可視光で光触媒反応を起こす起源として作用する2価の銅の2種類が混合していたほか、CuxO/TiO2の目視での色は白色に近く、透明なコーティングへの応用も期待できることが示されたとする。
また、CuxO/TiO2をコートしたガラスと、コートしないガラスの表面に、新型コロナ・デルタ株の懸濁液を滴下し、所定の時間、白色蛍光灯(紫外線カット、1000ルクス)の照射下ならびに暗所下に設置した後、そのウイルス液を希釈して宿主細胞へ接種して寒天培地を加えて培養し、ウイルスによる感染で破壊された宿主細胞の数をカウントしたところ、暗所では3時間、白色蛍光灯の照射では2時間以内で検出限界値未満の量までウイルスを不活化することが確認されたほか、アルファ、ベータ、ガンマ株でも白色蛍光灯の照射2時間でウイルス量を検出限界値未満まで不活化させることができることが確認されたという。
さらに、CuxO/TiO2による、ヒト細胞への侵入に使用するウイルス表面のスパイク(S)タンパク質の損傷特性が、酵素結合免疫吸着検定法で定量評価されたところ、CuxO/TiO2は暗所でもSタンパク質が減少し、白色蛍光灯の照射によってさらにその損傷能力が向上することが明らかにされたとする。
加えて、新型コロナのRNAの変化について、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法による解析が行われたところ、CuxO/TiO2は暗所でもRNAを減少させることができることが判明したほか、白色蛍光灯を照射した場合は、2段階のRNAの減少傾向が見られたとした。これは、1段階目(4時間)は暗所でのRNAの減少と同様に、CuxOの強い変性作用によってRNAの断片化がもたらされたと考えられるとし、2段階目(48時間)では、光触媒による酸化分解反応が進んで、さらにRNAの断片化が促進されたとしている。白色蛍光灯の照射により、TiO2とCuxOの間で電子の界面電荷移動遷移が起こり、酸化チタン上に強い酸化力が生じることで、RNAの分解がさらに進むと考えられると研究チームでは説明している。
なお、今回の機構に関する毒性に関しては、Ames試験により毒性リスクが極めて低いことも確認されており、研究チームでは、今回の成果を踏まえ今後、病院、空港、学校、飲食店など、多くの人が集まる施設などにおける飛沫の付着や人が触れる場所に対して用いることで、持続的な抗ウイルス効果を付与できることが期待されるとしている。