研究チームによると、日本の高齢の肥満者で、骨格筋量と筋力の両方が低下しているサルコペニアを合併している人はほとんどいないという。そのため、今回の研究では筋力低下のみを基準として用い、握力が男性で28kg、女性で18.5kg未満の人がサルコペニアと定義された。
研究では1615名を、肥満もサルコペニアも該当しない「正常」、肥満のみ該当する「肥満」、サルコペニアのみ該当する「サルコペニア」、両方とも該当する「サルコペニア肥満」の4群に分類し、各認知機能検査の点数や軽度認知機能障害、認知症の有病率を比較。その結果、正常、肥満、サルコペニア、サルコペニア肥満の順で、各認知機能検査の点数が低下し、軽度認知機能障害、認知症ともに有病率が増加していることが判明したという。
また、年齢や教育歴、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を調整した結果、サルコペニア肥満は、正常と比べて、軽度認知機能障害のリスクが2倍強、認知症のリスクが6倍強になることも示されたとするほか、認知症では、サルコペニアだけでも正常の約3倍のリスクになることも確認されたとしている。
なお、今回の研究から、都市部在住高齢者におけるサルコペニア肥満では、軽度認知機能障害や認知症のリスクが高い可能性が示されたこととなったが、研究チームでは、日本では介護や支援を必要とする高齢者は年々増加している一方、介護予防や健康寿命の延伸に関する取り組みが進められており、軽度認知機能障害を有する人は、運動や食事などの生活習慣を改善することで、認知症の進行予防効果が期待されるとしている。
また、握力やBMI(身長・体重)といった簡便な方法によって、認知機能低下の早期発見に役立つことが今回の研究では示唆されたとする一方、サルコペニア肥満と認知機能低下が関連するメカニズムや、認知機能低下の原因といった不明な点が多く残されているため、今後さらなる研究を進めていくともしている。