SoRとSoEを結ぶBPM基盤で両利きの経営をシステムに落とし込む
続いて、NTTデータ バンキング統括本部 OSA推進室 部長 青柳雄一氏が、ゆうちょ銀行が導入したBPM(Business Process Management)基盤について説明した。同氏は、「金融機関は、以前から続く外部環境の変化とコロナ禍で加速している変化に直面しており、安定と変革を両立する『両利きの経営』が求められている」と語った。安定はSoR(Systems of Record)に当たり、変革はSoE(Systems of Engagement)に当たる。
安定を実現するには、既存の金融業務をデジタルで効率化し、また、変革の実現に向けては、顧客接点の強化と顧客理解の深化に取り組んでいく。前述したRPAとPipitLINQは、安定の実現に向けた施策となる。
一方、変革を実現するには、デジタル化によってバリューチェーンを再構築し、新たなビジネスモデルを創出する。具体的な施策としては、オムニチャネルによる顧客接点の強化とデータ活用の高度化による顧客理解を深めることがある。
NTTデータは、両利きの経営をシステムに落とし込むため、「Open Service Architecture」を開発し、金融機関に提供している。加えて、サービスラインアップのエリアを拡充するため、誰でも無料で利用可能なAPIギャラリーを用意している。APIギャラリーでは、カタログ機能や共創機能を提供している。
ゆうちょ銀行は、「Open Service Architecture」とAPIギャラリーを活用して、BPM基盤を構築した。BPM基盤はSoRとSoEを結ぶための基盤となる。そして、APIを活用して、事務効率化とチャネル改革の双方を実現しているという。
共創を成功させるカギはプラットフォーム
最後に、北野氏と青柳氏が対談を行った。青柳氏がデジタル化のプロジェクトのハードルについて聞いたところ、北野氏は次のように語った。
「開発ボリュームのコントロールが難しく、人がやっている業務をすべてデジタル化するのは非現実的であるため、臨機応変に対応している。また、取捨選択の場所も人によって違うため、一定の線引きが必要。コンセンサスをとるのが難しく、ボトルネックになっている」
北野氏の言葉を受けて、青柳氏は「これまでのプロジェクトは銀行からの要件に従って、ベンダーが対応していたが、ゆうちょ銀行のプロジェクトはプロトタイプを使いながら伴走型でやったのが大きな変化だった」と述べた。
また、DXを語る際のキーワードの一つでもある「共創」について、北野氏は次のように説明した。
「業務の電子化は銀行だけでできることではなく、行政側も協力する必要があり、プラットフォームを構築することがカギとなると思う。これにより、いろんな金融機関がジョイントしてくる。また、プラットフォームを使えば、行政機関は意識することなく、必要な金融機関にデータが渡り処理されるようになる。こうした仕組みができないと、共創は浸透しないのではないだろうか」
最後に、北野氏は「スピードに差異はあるだろうが、デジタルは基本的に時代の流れだと思っている。日本は成熟した社会であり、超高齢化が進むと言われている。そういう社会がどのような形でデジタル化を実現していくのか、個人的に興味がある。ゆうちょ銀行がデジタル化に果たす役割は小さくない。望ましい形でデジタル社会が進むよう、貢献していきたい」と話し、講演を締めくくった。