日本ディープラーニング協会(JDLA)は2月18日、「コクヨの実験カルチャーを加速するデジタル人材育成とは?」と題したウェビナー「人材育成 for DX」を開催した。
同ウェビナーはJDLAが主催する企業向けの人材育成セミナーであり、毎回さまざまな企業のゲストを迎えて各社の取り組みを紹介している。今回は文具やオフィス家具を手掛けるコクヨが取り組む「デジタル推進タスク」について語られた。
コクヨのDXデザイン室で室長を務める三宅健介氏は、「体験デザインがコクヨの強みである」として、社内に根付く実験カルチャーについて紹介した。同社では、オフィス家具のデザインを開発する際に、その家具を使った働き方や学び方にどのような変化が起きるのかを特に重要視しているという。
DXと言えば通常は「Digital Transformation」を指すが、同社では「Digital Experience」と捉えている。三宅氏が所属するDXデザイン室は各事業部と情報システム部の間を取り持ち、顧客体験を起点とした戦略シナリオの策定支援や、顧客体験価値最大化に向けた従業員の働き方デザインなどに取り組んでいるという。
同社が持つ体験デザインの強みを生かすことで、家具メーカーとしての枠を超えて多様な働き方を提案し、誰もが個性を発揮しながら働ける環境づくりを目指しているとのことだ。こうした考えのもと、同社は今後10年間のビジョンについて「WORK & LIFE STYLE Company」を掲げている。既存事業に体験デザインを掛け合わせることで、新たな需要にも対応するとともに既存事業のブラッシュアップも狙う。
体験デザインを事業につなげるために、同社では「実験カルチャー」を重視している。1969年には新聞広告の中で「生きた実験ビル」をキーワードとして打ち出すなど、実験カルチャーに取り組んできた歴史は長い。社員が自社製品をユーザーとして実際に使用することで、より良いサービス提供に向けた改善に生かしているとのことだ。2021年2月には同社の品川オフィスを「THE CAMPUS」として、地域住民や他社従業員に開かれたオフィスにリニューアルしていることからも、カルチャーの継承がうかがえる。
三宅氏は「実験カルチャーとデジタルテクノロジーは相性が良い」として、AWS(Amazon Web Services)を例にクラウド技術について述べた。クラウド技術を活用することでシステム導入にかかる手間や費用が抑えられるため、アイデアを試す際には迅速かつ安価に取り掛かることができる。また、モジュールとして最新の技術をすぐに利用できる点も優れているとのことだ。クラウド技術は、最新の技術に触れながらアイデアを具体化するような場面に非常に適している。