フロンティアコンサルティングは1月31日、2022年の働き方と働く環境に関するトレンドを発表した。
2020年に新型コロナウイルス感染症が流行したことをきっかけに、多くの企業で自宅待機を強いられるなど労働環境に大きな変化が訪れた。コロナ禍は従前の働き方の課題が見えてくるとともに、その課題を見直す機会でもあった。約2年間にわたるコロナ禍の生活において、働き方のトレンドはどのように変化したのだろうか。
同社が2020年12月に実施した調査によると、74%の人が「新型コロナウイルスの流行がこれからの働き方について考えるきっかけになった」と回答している。また、これまで画一的であった働き方に対して選択肢が増えたため、各自の生活に呼応した働き方を希望する声も上がっているようだ。
こうした流れを受けて、同社は2022年の働き方のトレンドとして、働き方の起点は働く人々へ変化していると捉えている。これまでは内閣や一部の大手企業が働き方の変革をけん引してきたが、企業が用意した働き方に従業員が従う時代から、働く人々が求める働き方を企業が提供する時代へと変化しているという。
同氏が2つ目のトレンドとして挙げたのは「Purpose Driven Workplace(パーパスドリブンな働く環境)」だ。昨今、企業は自社の社会貢献性や存在意義であるパーパスが求められているが、働き方についても同様だという。パーパスを起点に働く環境を整え、人々が企業と協働して自己実現欲求を叶える人々へ機会を提供する必要がある。
「各自が自己の可能性を開く働き方を選択しやすくなった現代では、人々は欠乏欲求を満たし成長欲求を支援する環境と機会を求めるようになる」と、稲田氏はマズローの欲求階層説になぞらえて説明した。
「Purpose Driven Workplace」には、企業と個人がパーパスの実現に必要な社内外の関わりを育める環境が求められる。同様に、対面のみならず場所や時間、組織を跳躍したコミュニケーション環境も求められているとのことだ。
さらに、オフィスの作り方にも変化が生まれているようである。日本全体で画一的であった働き方が多様化し、企業は自社に合わせた働き方(ワークビジョン)に応じて物件や立地を検討するようになっているのだという。つまり、3つ目のトレンドは「ワークビジョンからロケーションを選択する」という流れだ。
これまでは物件や立地が確定した後に本格的なオフィス設計を始める例がほとんどであったが、今後は自社の理想の働き方をワークビジョンとして明確に示し、それに応じた立地条件や物件を検討する企業が増えているそうだ。
4つ目のトレンドとして稲田氏は「ソーシャルキャピタル」と「ウェルビーイング」を紹介した。
ソーシャルキャピタルとは社会関係資本を指し、人と人のつながりで得られる便益の総称だ。金融資本や人的資本に続く第三の資本とも言われる。英レガタム研究所が発表した「レガタム反映指数」(2021)の中で、日本のソーシャルキャピタルは世界167カ国中143位と非常に低いことが明らかになった。核家族化や地域社会の弱体化、企業と個人のつながり方の変化などが要因だと考えられる。
一方のウェルビーイングとは、自己実現に向けて肉体的にも精神的にも社会的にも満たされた状態を指す。それぞれの要素は独立しているのではなく互いに影響しており、企業は一過性の施策を取るのではなく、社員と共にウェルビーイングを追求し続けようとする継続的なスタンスが必要だ。全てを高いレベルで充足させることは難しく、自社が手を付けやすい分野から取り組むのが良いとのことだ。
「Purpose Driven Workplace」を構築することで、パーパスの実現をきっかけとした社内外のつながりが個々のソーシャルキャピタルを醸成し、社会的なウェルビーイングの向上にも寄与するのだという。社員のウェルビーイングの向上によって自己実現に向けた環境がさらに整っていく循環が、企業と働く人の双方にとってサスティナブルな働き方を生む。