日本最大の都市・東京への進出は?

まずは、東京や大阪といった大都市ではなく、地方から攻めるというのがDoorDashの戦略だ。「間違いなく正しい戦略」と山本氏は強調する。当初は、アプリの翻訳にも不備があったり、配達員を配備するオペレーションに課題があったり、「完璧じゃなかった」と山本氏。そうした点を改善しながら地方でブランドの認知度を高め、東京・大阪といった大都市圏への進出につなげていく考えだ。

特にマーケティング費用は、他社が「ケタ違いのお金を使っている」(山本氏)という状況で、新興のブランドだと埋もれてしまい、ビジネスとして成り立つのかどうかも難しいと判断しているようだ。「地方での経験だけでも、東京でのビジネスに必要なものは想像できる」と山本氏は話し、どのタイミングで東京進出するかを慎重に見極める。「大都市への進出は、他社の投資体力がなくなってからのほうがいいのかもしれない」と山本氏はいう。

Woltの買収、foodpandaの撤退の影響は?

グローバルでは、DoorDashが同業のWoltを買収。現時点で買収が完了していないため、国内事業への影響はないという。Woltは国内でもサービスを展開しており、すでに東京、大阪などの大都市圏でもスタートしている。

もともとの両社の戦略が異なるため、仙台など一部ではバッティングしている。現状では、「競合他社」として無関係に事業を展開していく方針になっている。

さらに、独foodpandaが日本市場からの撤退を発表し、今年1月31日に国内サービスを終了する。Woltとのバッティングもあり、買収が完了した段階でWoltとDoorDashをどのように整理するか、その去就も注目されるが、山本氏は「DoorDash本社でも日本市場にコミットしている」と強調する。

米DoorDashは、日本市場に関しては長期的な目線で展開していくことを示しており、山本氏もそうした考えのもと、地域展開やローソンとの協業のようなビジネス展開も、「スピード感を持ちながら、慎重に進めている」(同)という。foodpandaの撤退も影響はなく、当初の戦略を継続していく方針だ。

  • 米国では、ペットスーパーストアのPetSmartとも提携している

戦略に関しては、新型コロナウイルスの影響が大きい。コロナ禍においてデリバリーの需要は拡大したが、緊急事態宣言が明けても注文は大きく落ち込むことがなく、一度利用した人が離れずに再利用している状況が明らかになっているという。

「ここまでコロナ禍が長引くとは思っていなかった」と山本氏も認め、「新型コロナウイルスの影響から外出ができずに複数回のデリバリーを注文する人が増え、デリバリー文化の定着に向けてプラス要因にもなった」と山本氏はいう。

こうして市場が拡大すれば、「必然的にプライシングの議論が出てくるだろう」と山本氏は予測する。現在は単純に店頭と同じ料金に配送料をプラスした代金が請求されているが、デリバリー文化が定着して売上に占める割合が多くなれば、加盟店側もデリバリー用により安価な商品を作る、といった動きが出てくるとみている。

「店内飲食に比べると食器の上げ下げといった作業もなくなるため、その分料金を下げ、多少収益性が下がってもいい」といった考え方もありうる、と山本氏。「3年後には加盟店の中にも新たなデリバリー戦略が出てくる」と見込む。すでに、大手加盟店にはそうした働きかけもしており、山本氏は、これが実現すればさらにデリバリー市場の拡大につながると期待している。

2022年は「サービスを磨く」

2022年の戦略について、山本氏は「アプリのクオリティやサービスレベルの向上を要にしている」と説明する。日本にも開発拠点を設け、エンジニアチームを立ち上げたこともその一環で、特に利用者にインパクトがあるのは検索機能の改善だという。

例えば、近所の店を探したいとき、「ケンタッキー」「KFC」「ケンタ」というワードで検索をすると、従来はケンタッキーフライドチキンにたどりつかない検索語もあったが、こうした部分を順次改善しているそうだ。「今年、アプリのクオリティはどんどん上げられると思う」と、山本氏は胸を張る。

マーケット自体は今年も「右肩上がりで間違いない」(山本氏)という認識だが、そこでシェアを獲得しようと各社が多額の予算を投じたキャンペーンなどを実施している状況で、「どこかでお祭り的なコンシューマキャンペーンは落ち着く」とみて、DoorDashは一歩引いた立ち位置を示す。

マーケットがさらなる盛り上がりを見せたとき、重要なのは競争力のサービスを提供できているかどうかであり、その観点からDoorDashはサービスを磨き上げることを重視していく意向だ。