ラグー氏のCEO就任で広がるマルチクラウドの世界
前述したように、2021年はグローバルのCEOが交代し、ヴイエムウェアにとって転機の年となった。経営トップが変わったことで、ヴイエムウェアにどのような変化がもたらされたのだろうか。
山中氏は、ラグー氏について、「ラグーは2003年に入社以来、当社のテクノロジー全般を見てきました。SDDCを世の中に発信した人間でもあります。だからこそ、マルチクラウドに向けてアグレッシブに舵を切ったのだと思います。われわれは、ラグーのことを『Our own Raghu』と呼んでいます。これから、ラグーの下で働くことを楽しみにしています」と語った。
山中氏は、「二刀流のDX」を「Power of And(ANDが求められる改革)」と定義している。これはITを活用する上で相反するものを両立させることを意味する。この「Power of And」という言葉は4年前にも使われたが、そこから「ベースのプラットフォームが変わってきているだけ」と山中氏は話す。「デジタルサイロを抽象化して、コントロールとフリーダムを提供しています。今は、アーキテクチャをどう構えるかというフェーズの議論になっています」(山中氏)
また、山中氏は「ITの世界の中立国になる」というラグー氏の言葉を引き合いに出し、「ラグーは、ヴイエムウェアが中立であるというメッセージを改めて出しました。ラグーの主張は一貫しています。日本のマーケットもマルチクラウドの世界がもっと進むでしょう」と語った。
現在、企業ではクラウド戦略の見直しが始まっている。IT部門はセキュリティを強化し、無駄をなくしたいと考えている。一方、LOBは新しいものに挑戦していかなければいけないと考えている。企業において、こうした動きが大きくなるほど、「われわれのやるべきことが増えてくる」と、山中氏は胸を張る。
2022年はアプリケーションのモダナイゼーションに挑戦
そして2022年、クラウドとアプリケーションの抽象化を掲げるヴイエムウェアはどのような戦略の下、ビジネスを進めていくのだろうか。
山中氏が真っ先に挙げたのが「アプリケーションの進化の支援」だ。「日本市場でも、アプリケーションを見直す動きが出てきています。そうした中、新たなアプリケーションプラットフォームをいかにしてリアルなものにしていくか。アプリケーションのレイヤーになると、パートナーの力も重要になってきます」と同氏。
アプリケーションの世界では、コンテナやマイクロサービスを活用して、アジャイルな開発をしようという機運が高まっており、DXを実現するために必要な要素として注目を集めている。ただし、米国に比べると、日本企業のアプリケーションのモダナイゼーションのスピードは遅いと言われている。
そうした状況について、山中氏は「アプリケーションも他のテクノロジーと同じと考えています。ストレージを仮想化するvSANも徐々に浸透してきました。今では、SDDCが標準になっており、物理ストレージが注目されることはありません。アプリケーションも同様だと思います」と分析している。
ちなみに、アプリケーションの進化は「モダンアプリケーション」と「アプリケーションのモダナイゼーション」に分けられる。山中氏は両者について次のように語った。
「モダンアプリケーションは、Amazon Web ServicesでもAzureでもオンプレでも、一貫性のあるプラットフォームで実装します。一方、アプリケーションのモダナイゼーションはチャレンジです。今年10月に、無料のKubernetes ディストリビューションとしてTanzu Community Editionをリリースしました。テクノロジーベンダーとして絶対にやるべきことは、テクノロジーを展開していくことです。これから、TanzuのコミュニティであるTUNA.jpも拡大していきます。加えて、パートナーのオファリングにわれわれのテクノロジーを組み込んでいくことも大切です」
最後に、山中氏は「テクノロジーを通じて日本の社会をどう変えていくかは重要なテーマ」と語った。ヴイエムウェアは古くから「Tech for Good」という精神を大事にしており、グローバルでさまざまな取り組みを行っている。
2021年、ヴイエムウェアはセキュリティ対策、デジタル化推進、デジタル人材育成の支援を強化するため、北海道庁と連携協定を締結した。北海道庁とは変革に向けて共同検証を行っており、こうした活動をもっと増やしていきたいという。
そして、山中氏は「お客さま、パートナー、社員含めて未来へつなぐ架け橋となっていきたいと考えています。日本の社会の架け橋となることは、ヴイエムウェアのアイデンティティとして重要です」と、ヴイエムウェアと日本社会に貢献する企業として発展させていくという意気込みを改めて語った。