日本企業のデータ活用の課題と解決策とは?

とはいえ、世界に比べて、日本はデータ活用が遅れていると言われている。日本企業はデータ活用において、どのような課題を抱え、その解決策とはどのようなものなのだろうか。

キング氏は、「楽天で学んだこと」と前置きしたうえで、次のように語った。

「世界はフラットになってきており、データ、AIといったテクノロジーを加速度的に利用することが市場命題となっています。そこでは、網をかけるようにモノを見る、つまり、広い視点を持つ必要があります。これにより、必要な技術や人が見えてくるし、気づきが出てきます。課題を解決するための人材がローカルにいるのか、グローバルにいるのかを見極めることも大切です」

そして、「日本では『クオリティに厳しい』『好奇心が豊か』という文化からイノベーションが生まれています。今、そこにスピード感が求められています。とにかくやってみて、失敗したら次に向かう。早く繰り返しながら改善していくことが重要です」と、キング氏は指摘する。

では、日本の企業が「スピード」をもってデータ活用を進めるには、どうしたらよいのか。キング氏は「新型コロナウイルス、グローバル化の進展により、日本も変わってきています。これまでは意思決定に必要なデータを集めるのに時間がかかっていましたが、今、日本企業はより早くデータにアクセスし、洞察力を持って意思決定をすることが大事かを理解しています」と話す。

キング氏は「スピードとクオリティが一丸となって提供できている楽天はよい例」とし、「日本のクオリティの文化にスピードが融合することで、素晴らしいものが期待できます。すべての企業で同じスピードで進んでいるわけではありませんが、SASはすべての企業をリードしていきたい」と述べた。

新技術への投資や買収などIPOによる相乗効果を期待

さて、IPOによって、SASがどのように変わるのかも気になるところだ。キング氏は、SASのIPOの未来について、次のように語った。

「これまで25年間、公開企業で仕事をしてきましたが、IPOは必ずしも変えることを強制するものではありません。その一例がカルチャーです。カルチャーには長い歴史があり、カルチャーを変えることは簡単ではありません。IPOはいいことだと考えています。今やデータやAIの時代であり、早く変わることが求められています。その先にはイノベーション、テクノロジーの活用がありますが、IPOによって、新しいテクノロジーに投資することが可能になり、相乗効果を期待できます」

また、IPOによって透明性が求められることになるが、情報を隠すことなく提供することで、企業の価値を向上する上で役に立つと考えているという。「今後当社がIPOへの道を進むにあたり、引き続きブランドやプラットフォームに投資し、当社のコア・バリューを最優先に考えて、お客様が最も複雑な問題を解決できるよう支援していく所存です」と、キング氏はいう。

2022年はオンプレ、クラウドが使えるようなマネジメントに注力

そして、2022年はどのようにビジネスを進めていくのだろうか。既存の顧客には、データの活用を理解してもらいながら、将来に向けて誘導していくという。そうした意味では、「クラウドが重要になります。SAS Cloud、SAS Viyaといったソリューションがありますが、サブスクリプションモデルを活用しながら、よりよいサービスとソリューションを提供できます」とキング氏。

クラウドについては、「SAS、SAS以外の2者択一ではないと考えています。オンプレ、クラウドの双方がつかえるよう、マネジメントしていくことがわれわれのミッションです。将来のイノベーションやお客さまの利益につながる情報を提供していくことで、SASのクラウドを考慮中の顧客にチャンスを訴求していきたいです」と、キング氏は語る。

また、SASのこれまでのビジネスを踏まえ、顧客の長期パートナーとして歩むことも忘れない。「お客さまとの間に20年の歴史があれば、さらなる20年を見据えた展開をしていきます」(キング氏)

最後に、キング氏は「グレイトカンパニーになれるよう、顧客、パートナー、スタッフに対し、パッションをもってモチベートしていきます」と語った。そこで課題となるのが人材の最適化だ。それには、新しい人材と古くからいる人材をうまく組み合わせ、補完的なスキルセットであるグローバルのリソースやナレッジを活用していくことになる。

キング氏は楽天時代に、70の国籍、かつ、95%以上が30歳未満のスタッフをマネジメントしていたそうだ。そのとき、「難しい局面もあったが、エキサイティングな経験をしました。お互いを理解してドライブするためのモチベーションが重要であることを学びました」とキング氏。

統計から始まったSASからは落ち着いた社風を感じるが、そこに、アグレッシブな楽天のカルチャーを融合することで、新たなSASが生まれるような気がする。エネルギッシュに話すキング氏の姿から、そんな期待を感じた。