セイコーエプソン
2020年版と2021年版小型衛星最新技術レポートの第5章の「慣性センサ」のパートには、セイコーエプソンのIMUが6製品登場している。
IMUとはジャイロスコープと加速度計を統合した機器で、衛星の姿勢や速度の変化を検出する機能を持つ。エプソンは小型・低消費電力のIMU製品を発売しているが、実はこれまで利用シーンにはドローンや農機、橋梁や道路などの劣化診断などを想定しており、宇宙用の訴求はしていなかった。
NASAは、メーカーも「地上用」と考えていたIMUに衛星搭載用としての可能性を見出し評価したわけで、いかに幅広く資料を収集しているかがうかがえる。
セイコーエプソンの担当者に製品についてや、掲載の意義について聞いた(以下担当者コメント)。
「小型衛星最新技術レポートで取りあげられている弊社IMUは、本来、産業・工業システム向けの製品で、衛星や宇宙用途の仕様・基準を満たすことを目指した企画設計、製造はしておりませんでした。
NASAという航空・宇宙分野の技術開発で世界最高峰にあるとされる機関から、その技術成熟度レベルにおいて、弊社IMUが航空・宇宙用途にも利用できる水準にあると認められ、エプソンの当該分野における技術力を高く評価いただけたものと大変光栄に思っております。
エプソンのIMUは、圧電単結晶の水晶素材に、エプソン独自の微細加工技術を用いたダブルT型の水晶ジャイロセンサー素子構造を採用し、3軸ジャイロセンサーと3軸加速度センサーからなる高精度なセンサーデバイスです。
水晶は、“圧電原理により微小な変位を高感度・低ノイズで電気信号に変換ができる”“Q値が高くヤング率が温度変化に対して安定であるため、外乱に対して高い安定性を持つ”などの優れた物理特性を有しております。リストにある「M-G370/M-G365/ M-G364」シリーズは、1インチサイズの小型・軽量プラットフォームを採用しながらも、高性能かつ低消費電力といった点に特徴があり、幅広いアプリケーションに対応できます。
それ以外にも、小型・軽量を追求したM-V340、防水・防塵型のM-G550と多彩なラインアップがあります。なお、従来の高安定に加え、低ノイズを両立した高性能水晶方式センサーを搭載した新製品“M-G370PDS0”を開発し、2022年の量産出荷を予定しております。」
アストロスケール
2020年版の14章には、「軌道離脱システム」の項目がある。増大するスペースデブリ対策として、役割を終えた衛星の高度を下げ、大気圏再突入させるための技術だ。
軌道離脱向けのエンジンなども含まれるが、アストロスケールは衛星を外から再突入させる技術、スペースデブリの除去の両方の実現を目指して宇宙実証を進めている。
アストロスケールの担当者に製品についてや、掲載の意義について聞いた(以下担当者コメント)。
「小型衛星最新技術レポートにて紹介されたことを大変嬉しく思います。地球周回軌道はすでに混雑状態であり、持続的に宇宙を活用していくためには、これ以上デブリを増やさないことと、既存のデブリを減らしていくことが必要です。
アストロスケールではデブリ除去を含む軌道上サービスに取り組んでおり、今後打ち上がる人工衛星が寿命を迎えたり、恒久故障の際に除去を行うEOL(End-of-Lifeの略称)については、2021年3月に民間世界初のデブリ除去技術実証衛星“ELSA-d(End-of-Life Services by Astroscale – demonstrationの略)”を打ち上げました。
8月には試験捕獲に成功し、運用を終了するなど機能停止した衛星を捕獲対象物体として、捕獲機(サービサー)が軌道上で捕獲できることを証明しました。現在は、次のフェーズである、サービサーの自律制御機能を用いた「自動捕獲」に向けた準備を進めています。
また、既存デブリの除去を行うADR(Active Debris Removalの略称)に関しては、商業デブリ除去実証衛星“ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan の略)”を2022年度に打ち上げ予定です。
当社のADRAS-Jは、世界初の大型デブリ除去などの技術実証を目指す、JAXAの商業デブリ除去実証プロジェクトフェーズⅠの契約相手方として選定、契約締結されており、このフェーズでは、軌道投入後、非協力物体である日本のロケット上段への接近・近傍運用を実証し、長期にわたり放置されたデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行います。
デブリ問題は、官民での連携を必要とする世界的な課題です。引き続き、民間企業や団体、行政機関と連携しながら、安全で持続可能な宇宙環境を継承するというビジョンの実現のために取り組みを進めていきます。」