--デジタル人材になるために必要な特性はあるのでしょうか
成瀬氏:明確にお伝えできる点として、年齢や文系理系は関係ありません。また年齢の面でも、役職定年を迎えるような年齢でプログラミングやエンジニアリングを修得する方もいらっしゃいます。反対に、デジタルネイティブ世代が全員エンジニアやデータサイエンティストになれるかというと、そうではありません。
重要なのは、「このデジタルテクノロジーを使えば仕事がちょっと楽になりそうだな」と思えるかどうかです。業務の効率化やテクノロジーの活用を面白いと思えるかどうかが1番のポイントではないでしょうか。
ビジネス変革スキルを持てる人材については5つの行動適正が見えてきました。「観察する力」「課題設定力」「コンセプトデザイン力」「プロジェクトデザイン力」「周囲を巻き込む推進力」の5つです。どの力が高いから優れているというものではありません。どの力が高い人に何をミッションとして与えるかを組織全体で考える必要があると思います。
--これからデジタル人材を目指す人は何から始めるべきでしょうか
成瀬氏:情報処理推進機構(IPA)が10月に「DX白書2021」を公開したのですが、多くのページがデジタル人材育成やキャリアサポートの話題に割かれていました。DX(デジタルトランスフォーメーション)やデジタル人材を解説する文脈の中にキャリアの話が出てくるのは意外に思われる方も多いと思います。同書はアメリカと日本のDXについて比較しながら書かれているのですが、この中でキャリア支援の話題が出てきます。
アメリカと日本は雇用形態が異なるという前提はあるのですが、アメリカでは個人のキャリアサポートに力を入れている一方、日本はどちらかというと年齢や役職によってキャリア研修やリーダー研修があるようなイメージですね。
日本も徐々に終身雇用が難しくなってきている中で、自ら学ばないとキャリア形成ができないような状況です。自分の先行きが不透明な時代の中で、自分のキャリアのためにどのような仕事に取り組まなければいけないのかを考える必要が出てきていると思います。どのような技術を習得すると自分の将来につながるのかを、しっかり考え直すことがデジタル人材になるための第一歩です。
--デジタル人材が活躍できるための社内制度はどのようなものにすべきでしょうか
成瀬氏:ポイントは大きく3つあると思います。1つ目は評価者の意識を変えることです。やはり評価をする立場の方が従来のままの評価基準を持っている場合は、その評価に依存するしかありません。新しいことにチャレンジできるのは評価を気にしない一部の人だけになってしまう可能性もあります。各事業責任者の方々がリスクを背負ってでもチャレンジする意義を理解して、チャレンジしている社員を評価してあげてほしいです。
そうは言っても、デジタルテクノロジーの勉強だけしていれば評価される制度もおかしいですよね。なので、2つ目に重要なのは、どれだけ小さくてもプロジェクトに取り組める状況を作ることです。デジタル化に取り組んだからといって無条件で評価するのではなく、プロジェクトの中で結果が出たときにしっかりと評価をしてあげる仕組みを作ってください。
3つ目は学んでいる人の可視化です。「共同実践体」と呼んでいますが、事業部や部署の壁を越えたコミュニティが必要だと思っています。現代は全員がデジタル人材であるべきと述べました。誰がどの領域をどれくらい学んで、いかに実践しているかを可視化できる状況を作ってください。ある意味で競争関係にあり、ある意味で相互に補助できる関係があれば組織全体のデジタルリテラシーが高まるはずです。ただし、これは制度があるだけでは不十分で、コミュニティの中を活性化させるための仕組みや体制が必要です。
プロフィール
パーソルプロセス&テクノロジー ワークスイッチ事業部 事業開発統括部 部長
事業構想士(MPD)/総務省委嘱テレワークマネージャー/プロティアン認定ファシリテーター
業務コンサルタントとして複数プロジェクトに従事した後、ワークスタイル・コンサルティングサービスを立ち上げ、複数社の労働時間改善やテレワーク導入を支援。また、国や自治体のテレワーク普及促進等の公共事業の企画・運営責任を担う。
2020年4月より、新規事業開発部門の責任者に着任し、企業向けの複業促進サービス『プロテア』およびデジタル人材育成事業の立ち上げを指揮。
2017年より、複業で総務省より委嘱を受けテレワークマネージャーとして活動。
2021年より、プロティアン・キャリア協会認定ファシリテーターとしても活動開始。