CDISC-SDTM Blockchain Teamの「ブロックチェーン技術を用いた臨床データの共有プラットフォーム」
CDISC-SDTM Blockchain Teamは、複数の製薬会社、CRO、システム会社から結成した8名のチーム。本業は臨床試験に関するデータマネージメント、統計解析などを行っている。臨床データはデータベース化されており、それらを統合解析することでさまざまな知見を得られる可能性があるが、臨床データの2次利用については個人情報保護の観点で課題が多いという。
しかし、匿名化処理には限界があり、匿名化しすぎると正しい解析ができない、特定の団体に管理が依存するといった問題があるという。
そこでこのプロジェクトでは、データのアクセス権ややり取りをブロックチェーンで管理し、データの二次利用プロセスの向上案を検討し、運用の妥当性を検証。得られた知見を選択肢の1つとして製薬業界に提案しようとしている。
検証した仕組みは、IPFS(Interplanetary File System )、ブロックチェーン、ABE(Attribute Based Encryption)を組み合わせたもの。
検証の結果、簡易的ではあるが、一連の想定フローを構築できることが確認できたという。今後は、より実運用に近い詳細なフローでのシステム構築と検証を行っていくという。また、暗号化の信頼性の検証、想定運用コストの検証、大容量データでの運用可能性の検証、患者個人と紐づけて管理する方法の検討などを行っていくという。
一方、導入の課題としては、暗号化だけでは個人情報保護の観点では 不十分(事前処理として匿名化処理が必要)、ABE暗号の信頼性の評価が必要、業界内への技術の理解、浸透、どの組織がどの予算で開発すべきか 、エンジニアの確保などがあるという。
今後は、期間内で検証し終えなかった内容を引き続き検証するほか、特許出願済の内容に項目追加を行っていくという。
イグスの「AIによるデータ精度向上及び災害対策サービス」
ケーブル保護管、可動ケーブル、樹脂ベアリングなどの樹脂製の機械部品の開発・製造・販売を行うイグスの課題は、英語で記載された製品名などを日本語する際、文字化け、誤字や脱字が発生している点。また、日本企業においても、社名、住所、郵便番号の間違いが発生しており、こういった文字のチェックや修正は1日あたり500-1000件あり、これをゼロにすることが目標。そこで、AIを活用したデータミスの洗い出し、チェック、自動修正のシステムの開発を進めている。
結果、会社名関連では、作業時間が約2.5hから約0.2h(約2.3hの削減)となり、実働126日で計算すると289.8hの削減効果が期待できるという。
住所関連では、日本郵便データの再分析及び正常データと問題データの切り分けに取り組んでおり、日本郵便データの自動でダウンロードし、データベース(SQL Server)格納するシステムを開発中。問題は、日本郵便データが1郵便番号あたり、複数データが存在し、それを1件にする処理を実施。今後は変換データを考慮したプログラム改修及び実装は継続して対応予定。
現在、会社名関連で浮いた工数を全社システムの見直し(老朽化対策)に充てているという。
今回の最終報告はあくまでも通過点なので、今後は引き続き推進活動を行い、顧客からあらゆる手段( EDI、メール、AI-OCR等)で受領するデータをAIでチェックし、問題があれば顧客側に通知を行い、改善を促すことや、最終的には、精度が向上したデータをビッグ データと連携し、AIが状況を判断する事であらゆる状況においても円滑に業務を遂行することを目指すという。
一方課題としては、DXを推進する上でやはり達成目標(数値)は必要で、その為の “見える化 も同時に必要な活動と想定しているほか、DX活動については運用メンバーに興味を持ってもらう点があるという。
ヴィッツの「次世代工場の安全化と効率化を実現するIoT、AIソリューション(「SF Twin」)」
組込みソフトウェアの研究・設計・開発、リアルタイムオペレーティングシステムの研究開発、ITソリューションソフトウェアの設計を行うヴィッツでは、「次世代工場の安全化と効率化を実現するIoT、AIソリューション『SF Twin』」によって、工場の安全化、高度自動化、効率化を目指している。監視画像センサや運搬ロボットなどの情報を集め、データ解析を行い、AIで効率化の提案を行いたいとしていた。
具体的には、現実の工場と仮想の工場をつなぎ、現実の工場をセンシングして、仮想の工場でシミュレーションすることで、現実の工場にフィードバックしていくという仕組みを構築しようとしている。
プロジェクト自身は長い道のりとなる予定で、この1年間は「SF Twin」の完成形に至る道筋を構築する活動をしており、その目標は達成したという。
この1年は、礎となる5つの技術の育成を行ってきており、そのための開発方針と予算獲得は達成できたという。
具体的には、現場の目(エッジセンサー)の開発については、岐阜県IoT コンソーシアムのWGが実施する実証事業に採用、現場の情報統合PF(エッジクラウド)の開発では、経済産業省令和3年度予算「次世代ソフトウェアプラットフォーム実証事業」に参画したという。
今後は、年度内に製品をリリースできればと考えているという。
ピーチ・ジョンの「社内AIポータル構想」
女性向け下着を主力にEC、店舗を展開するピーチ・ジョンは、勘、経験、度胸といった古い意思決定ではなく、AIを駆使してエビデンスベースで意思決定できる、誰でも容易につかえるように(数STEPで)社内AIポータルサイトシステムを目指す。
社員向けのAIポータルを構築し、SaaSサービスとして利用できるようにして、EC受注予測、店舗受注予測、在庫消費予測、顧客行動分析、トレンド分析に役立てようというものだ。
この1年では、需給予測と需給予測に基づいた最適な在庫数量の算出を目標に活動してきたという。
最初は、社内の購買情報、在庫情報、ECサイトの検索データをベースに相互相関係数の調査を行った。その後、ECサイト商品説明文をベクトル化し、AIでコサイン類似度を測ったという。最終的には、サービスサイトのフロントデザインを行い、ドラフト環境へ実装(デモンストレーション)した。
結果、目需給予測、需給予測に基づいた最適な在庫数量の算出については、人が算出した値より、より論理的、かつエビデンスベースで、有効な参考値を取得するという目標を達成したという。
ただ、今回の製品は「予測」という性質上、効果を測定できるのは将来になるという。
平井精密工業「歩留まり向上のための製造工程AI解析サービス」
金属エッチング加工を行っている平井精密工業は、製造工場における歩留まり向上を図るシステム構築を進めている。
このシステムは、現在は紙ベースで管理している製造条件、パラメータなどの情報をIoTで収集し、歩留まりとの相関関係をAIで分析し、不良の種類・歩留まりと製造条件・パラメータとの相関関係を分析。歩留まり向上に寄与する製造条件・パラメータをAIを使って見つけ出すものだ。
蓄積している過去数年分の歩留りデータより、傾向やパラメータとの関連を調査したが、現在のところ、歩留まりとの関連性を見出すことができなかったため、今後は、新たなパラメータを取得可能となる設備を導入し、影響を調査するという。
また、現在取得可能なパラメータを継続的に収集し影響を調査。「温度」「湿度」が、出来映えに影響するかもしれないという予測のもと調査しているという。
まだ、予定を完遂することはできていないが、将来的にAI等を利用した手法で不良原因の分析をすることに対して、パラメータやデータへのアプローチの方法を学ぶことができたことが成果だったという。
アズワンの「適正在庫AIモデル」
研究用機器機材、看護・介護用品、その他科学機器の販売を行うアズワンは、AIを活用して多品種、少量出荷のクイックデリバリーを実現することを考えた。具体的には、在庫の推移、入出庫のリードタイム、受注予測をグラフ化。このグラフと最適な状態のグラフをAIで比較し、最適な状態にするための方策をAIに提示してもらうというプロジェクトを実施している。
この1年で、適正在庫モデルの作成はできなかったが、受注作成モデルの作成はできたという。
受注予測AIモデルは、短期(1週間)と長期(1カ月)の2パターンを開発。短期予測モデルは、商品別受注額、商品のGoogle Trends結果、ECサイト「AXEL」ページビューで予測。正答率は91.7%だったという。長期予測モデルは、商品別受注額と同業他社決算資料をテキストデータネガポジ係数化したものを使い、正答率は89.5%だという。
このモデルを使ってコロナ対策関連グッズの2種類の商品群について、効果金額を求めたこところ、1カ月で約9,000万円の発注抑制につながったという。
そのほか、多数の取扱商材の中から受注が急増して欠品を発生させないように膨大な商品数から右肩上がりの商品を、AI画像マッチングで見つけ出す(急減して在庫圧縮すべき商品も同様に見つけられる)「受注急増(急減)商品判別AIモデル」では、受注推移グラフからAIが似たような推移を示した他商品を数秒で算出できたという。こちらは、特許申請予定だという。
今後は、受注額中位の商品群について予測を立てることが出来ると生産性が大きく向上するため、現在対象商品、モデルデータ整備、アルゴリズムを選定中だという。
ユーネットランスの「最適運行ダイヤの自動作成システムによる輸送業全体の効率化 」
貨物輸送を行っているユーネットランス の「最適運行ダイヤの自動作成システムによる輸送業全体の効率化」は、運送業界の過度な残業やドライバー不足の解消に向け、物流設計段階で最適車載レイアウトや最適運行ダイヤを他社も巻き込んで作成し、効率化を図ろうというもの。完成後は他社にも提供し、30%の効率化を目指した。
車載イメージを作成するサブツールの試用結果では、年間16.2トンのCO2排出量削減が期待できる試算結果となったという。ただ、実際には納入先の条件を加味する必要があり、その場合は年間54トン程度の削減効果だという。
今後は、効率化・最適化評価スキームのモデルケース構築し、協力してもらえる出荷元・納入先とスモールスタートし、成功事例モデルケースを作るほか、顧客への物流効率化・最適化活動への協力要請、最適運行ダイヤ作成システム (仮名)の導入検討(システムの概要検討 、導入準備)、サブツール(積付最適化計算ツール)の本導入を行っていくという。