重量品のコンベヤ投入や梱包も自動化
同社ではピッキングのほかにも、人手がかかる工程の自動化を進めている。
ケース品と呼ばれる重量のある商品のコンベヤへの投入作業は、飲料が1箱平均13㎏、コピー用紙は1箱20㎏以上もあり、これを1日平均約6,000ケース持ち上げるという重労働であった。そのため、腰痛やケガのリスクがあることから安全性の低下にも懸念があった。
この工程に同社は、Mujin社のデパレタイズ(デパレ)ロボット「MujinRobotデパレタイザー」を2021年1月から導入し、現在ではほぼすべてのケース投入をこのデパレロボットが行う。
また、梱包作業には自動梱包マシン「I-Pack」を導入。商品の高さを内部センサで検知して、段ボール箱を自動で折りたたむことができるため、人手による作業の軽減にもつながったという。
ロボットとヒトの共生を目指して
これまで紹介してきたように同社では、商品の入荷から出荷までの工程で自動化が進められている。
注文前の在庫品の荷下ろしや注文商品梱包後の出荷の工程は、機械的なスピードでは遅くなってしまうため、作業者の素早い判断力や動作が必要となり、機械の導入という意味での自動化はまだ進んでいないという。
名古屋氏は「人間的なスピードが必要な工程は、機械を用いた自動化は進みにくい。そのような工程は、現場の負担をいかに軽減させるかという観点が大事になってくる。今後の自動化は“現場で働くヒトの負担軽減”がキーワードになるのではないか」と説明する。
そのため、人手がまったく入らない完全な自動化を、この先数年で成し遂げるのは難しいとしたうえで、現在は一部の工程を切り取る形で自動化しているが、徐々に工程同士をつなげ、全自動化を進めていきたいと同氏は展望を述べていた。
このまま自動化を進めていくと、ヒトのかかわりはどうなるのだろうか。
名古屋氏は「自動化は決してヒトの仕事を奪うのが目的ではなく、ヒトの負担を軽減するものにしたい。重作業をロボットが行い、ヒトはロボットにできない、考えるなどの作業を行うという形で共生していくようにしていきたい」と説明する。
「ロボットとヒトが共生する」という観点を同社では重視しているという。AVC関西に導入された2台のピッキングロボットには、それぞれ「ショウ」と「トモ」と名付けている。作業者に親しみを持ってもらいたいとの想いからだ。
名古屋氏は自動化の目的をこうも語る。
「重作業はロボット、管理者であるヒトは軽作業のみといった形を実現できると、物流センター全体の稼働時間も伸び、物流費も抑えることができ、消費者に還元できると考えている」(名古屋氏)
アスクルは“東日本の最先端のフラグシップセンター”としてASKUL東京DCを竣工しており、2022年夏ごろに稼働を開始する予定だ。ALP横浜をはじめ、既存物流センターの運営や自動化の知見を基に、さらに進んだ自動化・省人化技術を導入していく予定だ。
労働人口の減少で、近い将来、物流業界では必ず向き合わなくてはいけないロボットの導入や自動化。同社が目指すヒトと共生し、ヒトの負担を軽減するロボットの活かし方は、その1つの手本となるかもしれない。