ある目的のための専用アプリケーションの限界
専用のアプリケーションプラットフォームには、そのプラットフォームで構築されたソリューションをプラットフォームがサポートしていない方向に進化させなければいけない時が必ず来るという問題があります。例えば、コンテンツ管理システムに注文メニューと支払いを備えたPOS機能の提供を開始するというようなケースです。ベストではないにしても、プラグインをいくつか追加すれば実現できることもあるでしょう。しかし、次にもっと高度な機能が必要になった時はどうするのでしょうか。
専用アプリケーションプラットフォームを使用している組織は、こうしたギャップを埋めるために、別のツールで新しいレイヤーを構築したり、手作業でコーディングしたり、新しくコーディングしたレイヤーを既存システムと連携するためにAPIを作ったり、そのほか、さまざまな方法で解決策を見つけだすことになります。しかしこれでは、ローコード開発のメリットが失われてしまいます。
実際に、これはよくあることで、以下のようなお客様の意見をよく耳にします。
「現在のプラットフォームはオンラインモバイルアプリ開発をサポートしています。オフラインでも機能するアプリを開発したいのですが、今のプラットフォームでは対応していません」
「既存のID管理システムと統合することができません」
なぜ、多くの組織はこの壁を効果的に乗り越えることができないのでしょうか?
それは、包括的に顧客のニーズを満たすローコード開発プラットフォームを構築するのが難しいからです。顧客が必要としているのは、より優れた効率的な開発ツールだけではありません。ローコードが開発環境を向上させるのと同じように、アプリケーションのライフサイクル全体を向上させるプラットフォームが必要なのです。モダンアプリケーションプラットフォームは、一時的な手法ではなく、ITチームが壁にぶつからないようにするためのものです。
モダンアプリケーションプラットフォームで課題を解決
破産した小売店、衰退した携帯デバイス、タクシー業界など、デジタルイノベーションの犠牲になった企業や業界の話は毎日のようにメディアで見かけます。デジタルイノベーションの波に飲み込まれないようにするには、企業は経営戦略とIT戦略の足並みをそろえて進める必要があり、さらに、ビジネス要求に応じたスピードでITソリューションを提供できなければなりません。例えば、Uberでモバイルアプリの完成まで2年間かかると言われたらどうなっていたかを想像してみてください。
開発のスピードは、ローコード開発プラットフォームにとって最大のチャンスです。しかし、ローコード開発を行ったとしても、次の制約に直面することがよくあります。
- 大量のバックログ
- 予算または熟練したリソースの不足
- 開発の複雑さ
- リリースされるまでに時代遅れになってしまうシステム
これらの問題に対応するには、あらゆるデバイス向けのユーザーインタフェース、統合、データモデル、ビジネスロジック、ワークフローなど、アプリケーションのすべてのレイヤーを視覚的に開発するためのローコードを提供し、カスタムコードでアプリケーションの拡張を可能にするモダンアプリケーションプラットフォームが必要です。
前述の「ある目的のための専用アプリケーションプラットフォーム」と同じように聞こえるかもしれませんが、モダンアプリケーションプラットフォームでは、以下のことが可能です。
- ワンクリックでアプリストアのモバイルアプリをパッケージ化
- 自動化された依存関係の影響分析、アプリケーションポートフォリオのガバナンスとリファクタリング、および展開が中断しないようにするデバッグを使用してアプリケーションのライフサイクル全体を管理
- 応答性の高いユーザー体験、オフラインデータ、オンデバイスのビジネスロジック、センサー統合など、複雑なモバイル要件への対応
- 大量のユーザーとトランザクションをサポートするための拡張
- 継続的デリバリーとデプロイによる、優れたユーザー体験の提供
- 厳しいセキュリティ要件への対応
- マルチパーソナリティのアプリ開発戦略を採用し、ビジネスとITの連携を最大限に活用
モダンアプリケーションプラットフォームでは、上記すべて、またそれ以上のことに対応しているため、専用のアプリケーションプラットフォームよりも大きな影響をビジネスに与えることができます。その理由は以下の通りです。
- IT部門は、生産性を向上させ、バックログを大幅に削減することができる
- メンテナンスコストが削減され、イノベーションのためにより多くの予算が確保できる
- ITリソースがより効果的に使われるようになる
- ITは真の意味でアジャイルになり、ビジネスに対応し、顧客が実際に必要としているものを提供できるようになる
- ビジネスはITと緊密に連携し、ソリューションの開発に積極的に参加できる
信用格付け会社のFICOを例にとってみましょう。FICOは、2年間の開発プロジェクトがあまりうまくいかず、その後OutSystemsのモダンアプリケーションプラットフォームを採用しました。その結果、半分の人員で、6カ月以内にまったく新しいオリジネーションシステムを開発し、3倍のスピードで市場に送り出すことができました。
モダンアプリケーション開発プラットフォームの選択
ローコード開発ソリューションの中で、今のところニッチツールのみ必要だという企業もあるでしょう。すべての企業や組織が、あらゆる機能を必要としているわけではないことも十分理解しています。
しかしながら、長期的な成長をゴールとする企業がローコード開発プラットフォームを選ぶ時は、多くのローコード開発ソリューションベンダーがある特定の機能を実現するためのツールとしてスタートしたという背景を念頭に置き、慎重に検討することをお勧めします。つまり、手っ取り早い解決策を考えるのではなく、真のデジタルトランスフォーメーションを実現できるプラットフォームを探すことが重要なのです。
ローコード開発のスピードや効率性をもちつつ、従来のコーディング開発の能力を兼ね備えたモダンアプリケーション開発プラットフォームは、組織によるアプリケーション提供方法を変えるきっかけとなり、経営とITが密接に連携することができるようになります。
著者
OutSystemsジャパン株式会社