Research and Marketsによるデータによると、ローコード開発市場は、2019年の103億ドルから増加して、2030年までに1,870億ドルに達すると予測されています。

ローコード開発市場が成長している背景には、大きく2つの理由があります。1つ目は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行と各国のロックダウンによって、ITを活用することでビジネス価値を提供するという考え方が急速に浸透したこと。2つ目は開発者の生産性を妨げ、バックログを増やしてしまう従来の開発手法が限界にきているということです。ローコード開発はビジュアル開発ができるため、開発チームはユーザーエクスペリエンスが高いアプリをより迅速に構築することができるのです。

話題のテクノロジーには、さまざまなプロバイダーが注目し、市場に参入します。ローコードプラットフォームの選択肢が増えることは魅力的に思えるかもしれませんが、数十年前に人気があったマイクロソフトのVisual Basicと同じように、これらの製品にはエンタープライズビジネスや開発者のニーズに対応できないソリューションも含まれています。

ローコード開発市場の規模

Gartnerは、エンタープライズ向けローコードアプリケーションプラットフォーム(LCAP)の最新のマジック・クアドラントにおいて、LCAPを次のように説明しています。

LCAPは、モデル駆動型でメタデータベースのプログラミング言語などを含む、宣言型のハイレベルなプログラミング抽象化によって、高速なアプリ開発やワンステップのデプロイ、アプリの実行や管理をサポートするアプリケーションプラットフォーム

この定義に基づくと、ローコード開発市場には、複数のプラットフォームとデバイスで実行され、データソースに接続し、ビジネスニーズに対応するエンタープライズアプリケーションの開発をサポートするプラットフォームが含まれます。Gartnerが定義するローコード市場に含まれるには、プロバイダーは次のような技術要件も満たす必要があります。

  1. 業界を超えたアプリケーション開発のためのLCAPの市場開拓戦略のデモンストレーション
  2. 最小限のアプリケーションプラットフォーム機能の提供
  3. 迅速なアプリケーション開発の提供
  4. エンタープライズクラスのプロジェクトを対象とした、エンタープライズグレードのLCAPの提供

市場が成長を続け、新しいベンダーが競争に加わるにつれて、Gartnerは毎年ベンダーの基準を調整しており、中にはケース管理などの異なるカテゴリーに移行されるベンダーもいます。 Gartnerは引き続き、企業がローコードアプリケーションプラットフォームに期待する機能群と、その機能群が企業のユースケースの全範囲に実際に対応できるかどうかに焦点を当てているため、2021年にはさらなる変更が行われると予想しています。

多様なローコード開発ソリューションのカテゴリー

社内のビジネスプロセスのデジタル化、レガシーアプリのリプレース、モバイル、チャットボットなどの新しいカスタマーエクスペリエンスの開発のためにローコード開発ソリューションを検討している場合は、ローコード開発ソリューションの歴史を踏まえて、市場を理解する必要があります。

ローコード開発のベンダー側から考えるのは少し変わった見方のように思えるかもしれませんが、実は非常に重要です。ここでは、ローコード開発ソリューションの3つのカテゴリーと、それらのソリューションがどのように使われているかを見てみましょう。

  • ローコードプラットフォームのカテゴリー

(1)ニッチツール

ニッチツールは、以下のような機能を持った特定のアプリを開発するために使われています。

  • データをキャプチャして保存するためのより良い方法
  • ビジネスプロセスを定義する簡単な方法
  • モバイルフロントエンドを作成する簡単な方法

これらのツールは、単一のビジネスニーズを満たすために使用されており、ビジネスプロセス管理(BPM)、ケース管理、そしてノーコード技術が含まれています。 拡張性が必要でない限り、こういったシンプルなアプリケーションを迅速に開発するのに適しています。

(2)エコシステムツール

このカテゴリーのプレイヤーは、大規模なソフトウェアベンダーが多く、それらの企業が、自社ツールを「ローコード開発ソリューション」と冠を掲げる理由は、そのツールを使って開発することで、自社のクラウドエコシステムにより大きな価値を生み出すことになるからです。

これらのソリューションは、一般的なアプリケーション開発(データベースアプリケーション、Webツール、GUIフロントエンドからCLIバックエンドシステムなど)以外の特定のビジネスニーズを解決するために開発されたため、本質的にはニッチなツールといえるでしょう。

(3)ある目的のための専用アプリケーションプラットフォーム

最後のツールは、カスタムアプリケーションを開発するために、最初からローコード開発のアプローチで設計されたプラットフォームです。このカテゴリーのベンダーは、市場のニーズやトレンドに対応する傾向があり、プログレッシブウェブアプリやチャットボットなど、将来を見据えたカスタマージャーニーのための新機能を取り入れています。これらの専用のアプリケーションプラットフォームは、一貫したユーザー体験を備えた目的に合ったアプリケーションの提供に重点を置いています。

これらのプラットフォームは、ニッチツールやエコシステムツールなどのような厳密に純粋なローコードツールではありません。これらには、マルチエクスペリエンス開発用のローコードフレームワークとツールが含まれていますが、自動化、統合、インパクトレポート、およびワンクリックデプロイのためのいくつかの機能もあります。