人との接触がない別荘地がワーケーションの場として人気
コロナ禍で「Airペイ」が活躍しているということは、宿泊業全体が苦しい状況にある今でも、蔵王山水苑は利用客が十分にいる状態ということだ。実際、利用客の内訳は大きく変わったものの、利用率は高いままだという。
「現在のお客さまはほぼ日本人です。Go Toトラベルの時期は若い人の短期利用もありましたが、それ以外は本来の利用層である長期滞在型が増えています。ワーケーション利用や家族滞在です。もともと、宿泊施設として選んでいただくために必須のものとしてWi-Fi環境整備などは進めていたのですが、結果として仕事のできる場になっています。大型ホテルなどでは他の宿泊客と行き会うことになりますから、一棟だての宿泊施設を利用したい人、そこで働きたい人が増えているようです。街に行かなければ、人との接触がなく、家で仕事をするのと変わらない状態で過ごせます。その事実とイメージから、われわれの施設が選ばれているのではないでしょうか」と相澤氏。
インバウンドから国内ワーケーションへの転換は、意図的に行ったわけではないようだ。「インバウンド利用が多かった頃は、インバウンド顧客は長期滞在の傾向があるため、国内の旅行者が蔵王山水苑を利用したくても予約ができなかったようです。しかし、コロナ禍の今、国内の方が予約しやすくなったことで、苦労することなく日本人の利用者を増やすことができました。これまでどういうニーズがあるのか見えていなかったのが、見えた形です」と相澤氏は語る。
予約システムとしても以前は1棟ごとだったものが、近いエリアで別施設を選択しやすくなっているという。「希望の別荘が埋まっていた時は近くの別な施設へ」「大人数で利用できる別荘が埋まっていた時は分散して複数棟へ」といった利用も可能になった。別荘地全体が囲われ、管理棟前のゲートを通っての出入りしかないなど、セキュリティも安心感につながっているはずだ。
維持が負担だった別荘を収益物件に、他地域にも成功の輪を
現在、蔵王山水苑の敷地全体にある別荘600棟のうち、宿泊施設として稼働しているのは25棟程度。福祉関連で利用している別荘もあるが、立ち並ぶ別荘全体で活発に人が出入りしているわけではない。ゆったりと利用できる安全な別荘地は、現在のコロナ禍で求められるワーケーションの場として最適だろう。インバウンドのニーズがしぼんだ時、即座にワーケーションへの切り替えがうまく行ったことで、別荘の活用が止まらずに進んでいる。
「別荘オーナーにとって、維持が負担である状態から、収益物件になりました。これまで売買を増やすことがわれわれの仕事でしたが、今は何もしなくても増えている状態。そうなると、リフォームや建築のニーズも増えるわけですが、それを地元の業者に割り振るのもわれわれがワンストップで行っています」と相澤氏は語る。
利用率が低下していた別荘地を活性化させることで、雇用を増やし、地域業者への仕事を斡旋するだけではなく、法人としての納税額も増えている。その結果、自治体への影響力も強まり、自治体と連携した新しい取り組みなども行いやすくなっているという。
「こうした取り組みは、国が強引に進めてもうまく行かないもの。地元の方々と連携して活性化を進め、徐々に協力を得ていくことが大切です。現在、さまざまな自治体や国から問い合わせをいただいています。われわれの取り組みは隣接自治体に広げたほうが合理的ですから、ノウハウを提供しています」と相澤氏。
続く不景気で活気を失っていた別荘地を立て直した手腕は、コロナ禍で苦しい旅行業からワーケーションへの転換も鮮やかに成功させている。特別な仕掛けを行ったわけではなく、宿泊場所として魅力的なインフラの整備や、豊かな自然と高いセキュリティによる安心感に、「Airペイ」で実現したニューノーマルへの対応が組み合わさっての結果だ。魅力的な別荘地として注目される蔵王山水苑は、さらに発展して行きそうだ。