空気の流れは?

前述のように、空調装置や換気装置は床下に付くのが基本。では、そこを出入りする空気の流れはどうなっているか。

実は、床下に左右2本ずつのダクトが、前後を貫通する形で通っている。内側の2本が排気用、外側の2本が送風用だ。換気空調装置が外部から取り入れて、温度を調整した空気は、その外側2本のダクトに送り込まれる。そのダクトからは、窓と窓の間の間柱1本ごとに、上向きのダクトが枝分かれしている。パスカルの原理により、すべてのダクトには同じ圧力がかかり、均等に空気が上っていく。

700系やN700系だと分かりやすいが、間柱の上方、荷棚の直下に空気吹出口が付いている。床下のダクトから送られてきた空気は、最後はそこから吹き出す。実はその背後に、間柱ごとに立ち上がりダクトが隠れているのだ。N700Sも同じ構造だが、吹出口は突出しておらず、目立たないように隙間から吹き出す形に処理されている。

  • N700Aの空調吹出口。間柱の中を通っている立ち上がりダクトが、荷棚の下にある吹出口に通じている

    N700Aの空調吹出口。間柱の中を通っている立ち上がりダクトが、荷棚の下にある吹出口に通じている

  • N700Sでは吹出口は突出しておらず、間柱の上端と荷棚の間の隙間から吹き出す仕組み

    N700Sでは吹出口は突出しておらず、間柱の上端と荷棚の間の隙間から吹き出す仕組み

300系でも床下にダクトを2組通していたのは同じだが、送風は荷棚の下ではなく、天井裏までダクトを伸ばしていた。ところがそのせいで、夏場に「冷房の利きが悪い」といわれる事態になり、700系からダクトを短縮して荷棚直下から出すようにした経緯がある。

E2系1000番代、E5系/H5系、E7系/W7系では、独立した吹出口を設ける代わりに、荷棚の下にスリット状の吹出口を隠し持っている。E6系は処理が異なるが、吹出口が目立たないデザイン処理になっている。

  • E2系1000番代は、荷棚の下にスリット状の吹出口を組み込んでいる

    E2系1000番代は、荷棚の下にスリット状の吹出口を組み込んでいる

  • E6系は独立した吹出口になっているが(間柱の上に開口部が見える)、デザイン処理によって目立たせないようにしている

    E6系は独立した吹出口になっているが(間柱の上に開口部が見える)、デザイン処理によって目立たせないようにしている

では、空気が出ていくほうはどうかというと、腰掛の脚台の辺りに排気口が付いている。ただし、すべての腰掛とは限らず、飛び飛びに付いていることもある。この排気口の床下に排気ダクトが通っており、換気装置に通じている。

つまり、車内の空気の流れは「側方上部から出てきて、足元から出ていく」となる。そして、客室内の空気は6~8分で完全に入れ替わる。毎時8~10回程度、と読み替えてもよい。

  • E6系で、腰掛の脚台下に取り付けてある排気口。ここの床下に排気用のダクトがある。送風用のダクトは、窓側に隣接する

    E6系で、腰掛の脚台下に取り付けてある排気口。ここの床下に排気用のダクトがある。送風用のダクトは、窓側に隣接する

例外もある

なお、空調装置を天井裏に組み込んでいる車両もある。それが500系とE3系。どちらもセパレート式の空調装置を使っていて、「室外機」に当たる部分は床下、「室内機」にあたる部分は天井裏にある。

この場合、ダクトは短くて済むから、吹出口は天井にある。また、外気も上部から供給する。一方、足元の排気口からつながる排気ダクトは床下にあるから、そこから天井裏の空調装置に再循環させるのは無理な相談。そこで0系と同様に空調と換気は別系統となっており、床下には空調室外機と排気装置が別々に付いている。

ちなみに、「つばさ」のE3系2000番代は、シャープの「プラズマクラスター」技術を使った空気清浄機能を備えている。これはCOVID-19対策で追加したわけではなく、新車時からである。