クラウド市場におけるオラクルの立ち位置とは
クラウドサービスにビジネスの軸足を移している今、気になるのは、クラウドサービス市場における日本オラクルの立ち位置だ。クラウドサービス市場を語る上で、Amazon Web Services(AWS)は外せないが、三澤氏は、「AWSのクラウドサービスとオラクルのクラウドサービスはまったく違う」と指摘する。
「汎用的なクラウドベンダーは主にエンターテインメント業界の要求に基づいてシステムを作り上げてきた。クラウドサービスが浸透した結果、エンタープライズでも彼らのクラウドサービスが利用されるようになった。第2世代のOCIは、エンタープライズのワークロードを動かすことを前提としており、設計思想が異なる」(三澤氏)
昨今、企業のITの利用形態として「マルチクラウド」が標榜されているが、「ミッションクリティカルなシステムをすべてのレイヤーでバラバラに組むのはリスクが高い。なぜなら、セキュリティにおいて問題が出てくるからだ」と、三澤氏は指摘する。
だからこそ、オラクルはIaaS、PaaS、SaaSとクラウドのすべての層を提供しているのだという。「本当に重要な資産を預かる時は、密結合の仕組みでなければ、お客さまの要求に応えられない。汎用クラウドベンダーとはここが違う」と三澤氏。
加えて、三澤氏はオラクルのクラウドサービスのコストメリットを強調する。これまでオラクルのソリューションは高いと言われてきたので、にわかには信じられない人もいるだろう。三澤氏はコスト面におけるオラクルの強みについて、次のように語る。
「われわれのクラウドは安くて速い。それは、新しいテクノロジーによって作り替えたからだ。第2世代のOCIは、少し乱暴な言い方にはなるが『巨大なExadata』だ。Exadataが売れた理由のひとつは高速で太いネットワークがあったから。第2世代のOCIでは、Exadataと同等のディスクIOとネットワークをクラウドで提供している。しかも、クラウドはすべて汎用部品で作られている。よって、コストも安い」
シェアド・ディスク型データベースでの勝因はスケールアウト
また、三澤氏は「一般企業のワークロードに、Netflixのようなハイパースケールのシステムは必要なく、企業では正確かつ重たい処理の実行が求められている」とも語る。企業のワークロードに最適なクラウドサービスとして、刷新されたのが第2世代のOCIとなる。
三澤氏は「世の中のレガシーアプリケーションのほとんどにOracle Databaseが実装されている。 言い換えると、レガシーシステムはビジネスクリティカルシステムであり、ミッションクリティカルシステムでもある。その仕組みをクラウド化するのは簡単ではなく、またクラウド化する意味も十分考える必要がある。重要なのは、動かす場所を変えることではなく、正しく進化させること」と話す。
データベースの歴史を振り返ると、データベースにはシェアド・ディスク型とシェアド・ナッシング型があるが、「シェアド・ディスク型が勝った。その理由は基幹システムのアプリが書きやすかったから。シェアド・ディスク型のデータベースを提供していたのは、IBMとオラクルだけ」と、三澤氏は言う。
利用が進むにつれ、シェアド・ディスク型で作られたシステムが大きくなり、データ処理が重たくなってきた。そうなると、メインフレームやSMPのような大きなコンピュータではコストが高くなってしまう。
そこで、オラクルはシェアド・ディスク型においても安価なサーバをスケールアウトさせるために、「Oracle Real Application Clusters(RAC)」を開発した。さらに、ストレージをスケールアウトさせるために、「Oracle Automatic Storage Management(ASM)」を作った。「オラクルのデータベースのキモはこのRACとASMにある。基幹システムを支えるデータベースを汎用的なコンピュータでスケールアウトできたので、オラクルは多くの企業で採用されるようになった」と、三澤氏は胸を張る。