新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受けて、株主総会にもオンライン化の動きが広がりを見せている。そうした状況の中でブイキューブ(V-CUBE)が11月5日、ハイブリット型バーチャル株主総会に関するWebセミナーを開催した。この記事ではその中から、ワコムとグリーの事例を紹介する。
ワコムのバーチャル株主総会
まずはワコムの事例から。講師は同社コーポレートアフェアーズ シニアマネージャーの遠藤堅吾氏が務めた。
2020年の同社の株式総会は6月26日に、動画配信を併用する形で開催した。 「お土産」(記念品)の配布を廃止した2017年の総会以降、出席者は年々減少を続けているが、2020年はコロナ禍の影響でさらに減り、来場した一般株主数は15人だったという。
株主総会への動画配信導入は2020年が初めてとのことで、その理由として遠藤氏は、
1.来場する株主が減り続けているため、もっと広く見てもらいたい
2.感染症拡大防止の観点から、積極的な来場呼びかけができない
3.感染予防のため従来の展示コーナーから事業説明会に変更し、それを広く見てもらいたい
の3点を挙げた。
動画配信にあたっては、まず同社が社内の朝礼などで使用しているMicrosoft Teamsを検討したという。 しかし、ログインIDの管理や通信トラブルなどへの対応がネックとなり、株主総会への導入は見送ったとのことだ。
続いて、株主総会の会場運営会社から紹介を受けた、会議などでの動画配信の実績がある会社を検討した。 この会社については、株主総会への対応実績がないこと、視聴者からチャットで質問を受け付ける機能がないため、不採用となった。 他に、株主総会の動画配信の実績がある会社も検討したが、時期的な問題でチャットによる質問受付が対応できないため、これも見送りとなった。
そこでブイキューブに相談したところ、チャットでの質問受け付けもオンデマンド配信も対応可能だったため、採用に至ったとのことだ。
動画配信を決定してからは、ブイキューブとの電話会議を約3回、株主総会会場の担当者や海外の株主などのための通訳会社も含めた全体会議を約4回実施し、ブイキューブは会場における機材設置場所やインターネット回線速度の確認など現地調査を行い、総会前日のリハーサルも実施したという。
こうした流れを受けてワコムは、株主宛に動画配信をする旨の案内文を作成し、議決権株主用に2万5254件のログインIDとパスワードを作成してメールで連絡し、同様に機関投資家向けの40件のID/パスワードを作成した。 さらに、従来は会場に隣接して社員が視聴するための部屋を設置していたが、2020年の総会ではコロナ対策で設置できないため、Webで見られるように社員用のiD/パスワードも513件作成したとのことだ。
総会の会場では、密状態を避けるため座席間の距離をかなり広く確保した。 開会から監査報告までは、会場後方に設置したカメラで撮影した映像を予約株主向けに配信し、事業報告の間は、会場のスクリーンに投影したものと同じ資料を株主にも配信したという。
総会の終了後には、事業説明会を開催した。
同社の社長がマイクを持って、開発やマーケティングの担当者にインタビューする形式で同社の製品を紹介していく、遠藤氏によると「某通販番組のような構成」だったとのこと。 壇上にカメラを配置して製 品を撮影し、その映像を会場のスクリーンに投影すると共に、株主にも配信したとのことだ。
総会では実施しなかったが、事業説明会ではチャットによる質疑応答にも対応した。 株主からの質問を事務局が受け付け、Excelのワークシートに貼り付け、それを議長席のPCでも見られるようにしたという。
同社が利用したブイキューブのサービスとして、遠藤氏はまず議決権株主向けの総会及び事業説明会の同時動画配信を挙げる。これらは、株主や同社社員も利用したとのことだ。
また同社は海外に多くの子会社を持つため、同時通訳した動画配信も実施した。これは質問を受け付ける必要がないため、簡易な配信にとどめたという。
加えて、総会の終了後3カ月間、オンデマンド配信も実施した。同社のサイトにリンクを張り、株主以外でも見られる状態にしたと遠藤氏は説明する。
遠藤氏は動画配信の結果について、「議決権株主のアクセスが76件と、あまり多いとは言えない数字でした」と振り返る。 この他、同社社員が192件、海外からは33件のアクセスがあったという。実質株主用には6件用意したが、5件にとどまったとのことだ。
オンデマンド配信では約225件のアクセスがあり、「ある程度の効果はあったかなと思っています」と遠藤氏は語る。事業説明会は、136件のアクセスがあったという。